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長編

かまいたち

きき 2020年1月29日
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俺の父は幽霊を信じない。 「そんなん居たら、そこらへん幽霊だらけじゃねえか。」 だそうだ。 そんな幽霊嫌いの父から聞いた話 父のふくらはぎには、縦に10cm位の傷跡がある。 普段は目立たないが、風呂に入った後なんか血行が良くなるのかうっすらと見える。 俺が小学生のとき、傷のことを聞いてみた。 これか? これはな、かまいたちにやられたんだ。 知ってるか?かまいたち。 そう、妖怪の。 父さんが小学生6年のときだったかな。 竹藪に卵を取りに行ってさ。 ん?ああ、そうか。 わかんないよな。 父さんの家、お前の爺ちゃんちな。 覚えてるか? 爺ちゃんちの裏に竹藪あるだろう。 昔はそこで鶏を放し飼いにしててな。 今も何羽かいるな。 前はもっと多かった。 で、竹藪に卵を産むんだ。 朝、そこに卵を取りに行くのが父さんたちの仕事だったんだ。 誰って、父さんと雄二と慶三のこと。 雄二おじちゃんと慶三おじちゃんだよ。 その日は雄二がいなくて。 なんでだったかな? サッカーの練習だったかな。 まあ、とにかくいなくて。 慶三は朝からおふくろに、あ、婆ちゃんな。 甘えてて。 あいつまだ、小1だったからな。 で、行きたくないって。 兄ちゃん行ってきてってな。 前の日に、親父から「竹藪ばばあ」の話を 散々聞かされてさ。 竹藪ばばあ、聞いてないか?爺ちゃんから。 まあいいや。 それで怖がっちゃってな。 しょうがないから、一人で取りに行ったんだ。 父さんも一緒になって、怖がらしちゃったからな。 悪いことしたなって。 それで一人で取りに行ったんだ。 竹藪ばばあ? 怖くなかったよ。もう6年生だったしな。 それよりも雄鶏の方がずっと怖かった。 雄鶏ってでかくてな。気性が荒いんだよ。 こう、目を合わせてる時はいいんだ。 向こうもスッと首を上げて、こっちを見る。 怖い顔してな、けど大丈夫。 背中見せちゃダメだ。乗っかってくる。 爪がな、痛いんだよ。 で、頭突っつかれてさ、髪むしられて。 あ、なんの話だっけ? そうそう、かまいたちな。 それで、一人で卵探して。 有精卵だからな、全部回収する。 有精卵わかるか?そうか。 ほっとくとヒヨコ産まれちゃうし、 いつ産んだ卵かわかんなくなると大変だろ? だから、その日産んである卵は全部回収する。 で、卵探してたらさ、足元を シュルシュルシュル!! って、なんかが通ってったの。 凄い速さだったな。 あっと言う間に納屋の裏まで行っちゃってさ。 色? 黄色っていうか、茶色っていうか。 黄土色? うん、そんな色だな。 それで父さん、イタチだなって。 細長かったし、あんな速さで動くのっていないからな。 実際、イタチとかキツネなんかよく出たんだよ。あとネコも。 鶏食っちゃうからな。 それで、ちょっと脅かしてもう来ないようにしてやろうって。 納屋の裏に回ったんだ。竹の棒持ってさ。 ゆっくり近付いて、こっそり覗いたら。 居たよ。 やっぱりイタチだった。 薪とか使わなくなった農具とか色々置いてあってさ。 そこの間からスーっと出て来た。 まだ向こうは気付いてないよ。 どうしようかな。大声出してやろうかなって 思って見てたんだけど、おかしいんだよ。 胴がやたら長いんだ。 普通イタチってのは、こんなもんだよ。 でもそいつは違ってさ。 顔が出て、前足見えてさ。 胴体が出て来て。 で、後足が。 後足が、出て来ないんだ。 もう頭も前足もずっと先に出てるんだけど。 長さ? そうだなあ。お前の身長くらいはあったよ。 それで、そいつがこっちに気付いたんだ。 こうクッと首曲げてさ、こっち見たんだ。 顔? 顔はイタチだったよ。 でも、なんていうのかな。 難しい言葉で言うと、 知性があるっていうのかな。 とにかく、そいつの意思?みたいなものが 伝わってきた。 うん。 「来るな」 って。 父さん動けなくって、声も出なくてさ。 そしたら、そいつはまたクッて向こうむいて。 凄い速さで土手降りて、川渡って、向こうの林に消えてった。 で、凄えもん見たって。 急いで家戻ってさ。 おふくろに卵渡しながら、さっき見たやつの 話しようとしてたらさ。 慶三が、 「兄ちゃん、足になんか付いてるよ。」 って。 見たら、ふくらはぎになんか白いものが、ちょっとピンク色も見えてさ。 なんだろうって触ったら「痛っ」てなって。 よく見たら、付いてるじゃなくて、 切れてたんだ。 白とかピンクに見えたのはさ、父さんの筋肉が見えてんの。 皮膚が切れてて、でも血が出てないから中まで 見えてたんだな。 見てたら、ジワッて血が滲んできて。 それ見ておふくろが、慌てて牛舎にいる親父呼んできてさ。 車で病院行って、すぐ縫ってもらった。 説明? しないよ。言ったって信じてもらえないだろうしな。 お医者さんも、竹で切れたのかねえって。 それにしちゃ、綺麗に切れてるねって。 もしかしたら、刃物で切ったんじゃ?って疑ってたかもしれないな。 とにかく、縫って貰って。 綺麗に切れてるから治りも早いですよってさ。 実際、一週間もしたらもう気にならなくなってたな。 だから、かまいたちはほんとに居るぞ。 お前も気をつけろよ。 幽霊? 幽霊は居ないよ。あんなもん嘘だ。 そう言って、父は笑った。 そんなわけで、 今でも父のふくらはぎには傷跡があり、 幽霊は信じていなくて、 かまいたちは信じている。 そして多分、竹藪ばばあも信じてる。

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