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長編

山神蓮花

匿名 6日前
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。 「火を見ていてくれたんですか?」 老人は頷いて、ニコニコと私の手にあるものを見ていた。 ブランデーだった。 「あ、飲みますか?」 老人は嬉しそうに頷いて、懐から変わった形の杯を差し出した。 「わあ、蓮の花弁ですか」 風流だな、と私は少し感動した。きっとこの人は雅やかな趣のある人なのだろう。そうでなければ、こんな粋な真似はできない。 大きな蓮の花弁に、私はブランデーを注いだ。 老人はブランデーを見たことがないのが、とても珍しそうに眺めていた。 「お口にあうか分かりませんが、どうぞ一献」 老人は嬉しそうに頷いて、きゅっ、と一口で杯をあおった。 んーっ、と胸を通り過ぎる熱さに耐え、それから満面の笑みを浮かべた。 それは本当に嬉しそうな顔で、酒を勧めた私まで嬉しくなってしまった。 「お気に召しましたか?外国のブランデーというお酒なんです」 こくこく、と老人は嬉しそうに頷き、懐からもう一つ杯を取り出して私にくれた。もちろん蓮の花弁だ。柔らかく、夜露に濡れていた。 老人はニコニコと微笑みながら、私の杯にブランデーを注いでくれた。もちろん私も注ぎ返す。杯を額に掲げ、一緒に飲んだ。 蓮の花に注いだブランデーは驚くほど甘く、香り高かった。 それから私と老人は意気投合し、酒を飲み交わした。 翌日。眼が覚めると、老人の姿はいなくなっていた。代わりに枕元に魚が数匹、榊の歯で結わえて置いてあった。おまけに手の中には、杯に使った蓮の花弁が残っていた。 「昨日のお礼かな」 雅やかな人だ、と私は感心した。 霧はすっかり晴れていて、帰り道で迷うことはなかった。 その二日後、学校に遊びに来ていた生徒に老人の話をすると、その場にいた全員が食いついてきた。生徒ばかりか、近くで草むしりをしていた校長まで私に詰め寄ってきた。 私は詳しく老人のことを話した。優しい老翁で、とても無口だったが、一緒に酒を飲み交わしたと。おまけに土産に魚をくれた、と。 子供たちはうわあー!と大いに盛り上がり、校長は「いやあ、君は運がいい!」とバシバシと背中を叩いて笑った。 不思議に思った私が「もしかして有名な方なのですか?」と聞くと、どうやらあの老人は山の神なのだという。 山の神は色んな姿に転変する。老人、少女、若い娘、時には動物にもなるらしい。 後から知ったのだが、普通は山の神はひどい醜女らしいのだが、熊本の山神は美しい女の姿で現れるらしい。私が会ったのは残念ながら美女で

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  • 東京出身なのに九州の僻地の教師に採用されるのは不可解だがまあギリギリ解せる、が、地方公務員がその後四国に赴任するのはどう考えても無理がある。
    バーカ
  • 市房山の話ですかね〜〜 山神などは私は信じますよ
    タツ
  • 良き話じゃ。
    びびり
  • また一緒にお酒が飲めると良いですね! 素敵なお話しありがとうございました。
  • 私も人吉球磨の者ですが、 この話は水上とかでしょうか?
    さー
  • これってもしかして人吉球磨地方の話ですか?私の地元ですが、渓流釣り鮎おいしいです。 とてもいいお話でした、物語みたいな、地元の話だったらうれしいです。
    地元人
  • 怖くはないけどとてもステキな話。日本昔話にありそうですね!感動しました。
    うんこりん
  • 内容素敵〜〜
    結梅
  • 素敵ー!!
    mmm
  • 内容も素晴らしいですが 文章、書き方も小説を読んでいる様で引き込まれました。
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