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長編

山神蓮花

匿名 6日前
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怖くない 818
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のように渓流釣りに出掛け、いつもより上流へ向かうことにした。生徒たちは上流には行こうとしなかったが、その頃の私は山歩き専用の靴や、そうした装備で身を包んでいたので躊躇しなかった。 異変に気付いたのは、歩き出して一時間ほど経った頃だった。 川に沿うようにして上流を目指していたのだが、いつの間にか霧が出ていた。私が経験したこともないほど濃い濃霧で、肘を伸ばした自分の手が見えないほどだった。 引き返した方が良さそうだ。そう思い始めた頃には、もう陽が傾き始めていた。 闇に包まれるまでは早かった。 ものの十分もしないうちに山に挿し込む日差しは消え、空気が急に冷たくなった。 相変わらず霧は濃い。 急いで引き返すという選択肢もあったが、私は霧の中を無闇に動くような真似はしなかった。九州には熊などの肉食獣はいない。たとえここで夜を越しても、獣に襲われるようなことはない。 幸い、私は装備を整えていた。釣り道具だけでなく、電気式のランタンもあった。 私は覚悟を決め、近くから比較的乾いている枝を見つけ、新聞紙に火を点けてから焚き火をした。山に行く時に新聞紙があると色々便利だと教えてくれたのは、もちとん生徒だ。 そして、ブランデー。これは私の密かな楽しみだ。私はあまり酒が強い方ではないので量は飲めないが、その分良いものしか飲まない。地味に洋酒や日本酒のコレクションがあり、最近はブランデーを飲むのがすきだった。 焚き火で暖を取りながら、ブランデーを少しずつ飲む。 これこれで悪くないな、と思った。しかし、肝心の魚はさっぱり釣れなかった。 私は携帯食(カロリーメイト)で空腹を紛らわせ、酒を飲んで良い気持ちになっていた。 比較的柔らかい場所を見つけ、そこに横になった。湿気がひどかったが、濡れるほどではない。それに腐葉土は柔らかく心地良かった。帰ったら風呂に入れば良い。 横になるとすぐに眠くなり、私は気を失うように眠りについた。 不意に、眼が覚めた。 焚き火の近くに誰かがいた。 私は驚いて跳ね起きると、その人物は生れた手つきで枝を折って火の中に放り込んだ。 老人だった。年齢は七十代ほどで、髭が生えている。麻でできた着物のようなものに身を包み、驚いている私をニコニコと見ていた。 「こ、こんばんは」 私が恐る恐る挨拶すると、軽く会釈を返してくれた。そしてまた枝を折って火にくべる。どう見ても地元の人だった。幽霊には見えないし、ましてや妖怪でもないだろう

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  • 東京出身なのに九州の僻地の教師に採用されるのは不可解だがまあギリギリ解せる、が、地方公務員がその後四国に赴任するのはどう考えても無理がある。
    バーカ
  • 市房山の話ですかね〜〜 山神などは私は信じますよ
    タツ
  • 良き話じゃ。
    びびり
  • また一緒にお酒が飲めると良いですね! 素敵なお話しありがとうございました。
  • 私も人吉球磨の者ですが、 この話は水上とかでしょうか?
    さー
  • これってもしかして人吉球磨地方の話ですか?私の地元ですが、渓流釣り鮎おいしいです。 とてもいいお話でした、物語みたいな、地元の話だったらうれしいです。
    地元人
  • 怖くはないけどとてもステキな話。日本昔話にありそうですね!感動しました。
    うんこりん
  • 内容素敵〜〜
    結梅
  • 素敵ー!!
    mmm
  • 内容も素晴らしいですが 文章、書き方も小説を読んでいる様で引き込まれました。
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