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鉄砲百合の咲く岬
中編

鉄砲百合の咲く岬

雪の結晶 2016年3月29日
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この話はもう20年も前の話になってしまった。長いこと忘れはしなかったが、テレビに映った百合を観て久しぶりに思い出しながら書いてみた。すべてのきっかけになったあの出来事を。 あの頃はまだ学生で毎日のように遅くまで友達の家で飲んで夜中に帰宅するのが日課で悪習だった。 その日も3時ころまで飲んで友達の家から帰る途中の事。ついさっきまでの雨も止み、濡れた道路を歩いていた。 昼間は陽射しも強かったせいかアスファルトのムワっとした夜だったが、やけに月が綺麗で辺りは明るかった。 気の迷いでいつもは通らない道に遠回りして歩いていた。 特に理由はなかったが月明かりを堪能したいのとむせるアスファルトから離れたかった。 見慣れない住宅街の中を歩いてちょうど曲がり角に差し掛かった所になんだか古ぼけた駐車場があった。 立小便でもと、中に入り奥に行き用を足した。 振り返ると相変わらずの立派な月に思わず「ほほ〜」と言う俺。 視線を落とすと思わず「ギョッ」とした。 気づかなかったが同じ駐車場に人の気配・・・よく見えないが駐車場に誰かいる・・・ グレーの作業服を着ているようだ 背が高い人のような 違う!姿勢が不自然だ 身体が極端に屈伸している 柵・・・にぶら下がっているというか 人が引っかかっている! でもその柵は剥き出しの金網みたいなもので人が乗れるモノじゃない。 それに気付いた途端、全身がこわばった どこからか甘い匂いがする・・・ 頭がぼ〜っとなって少し近づく俺。 どうしてかは分からないが止めどもなく涙が流れている。 怖いというかただ悲しかった。 我に返って気づくと空は明るくなってきていたので急いで家に帰りベッドに直行した。 目覚めると昼。大学は休みでゴロゴロしながら昨夜の事を思い出すと鳥肌がたった。 電話で友達に話すと「てか、飲みすぎじゃね?」と一蹴された。一理ありと思わず笑った。 何日か日が過ぎたある晩、車でドライブ。 あまりドライブは好きじゃないし、地理も分からない地域だったから、ただ真っ直ぐに走らせていた。 その日は彼女も同席。 夕方になり、辺りは暗くなりだしていたのでそろそろ夕飯だなとか、夜のテレビ番組とかの話をしながら車を真っ直ぐ車を走らせていたのだが、突然ハンドルを切って脇道に入る俺。 クネクネした道を走りだした。 でも口はずっと雑談していて自分ではその事に気づかなかった。 人の気配がしなくなった辺りで突然、彼女が「怖い!もう引き返してよ」と叫んでいるのだがその言葉が気にならない。 「なんなの!」と頬を叩かれてやっと車を停め、不意に俺は車を降りた。 全然意識はハッキリしているのだが、どうして自分がここに来たか分からない。 ただあの時の甘い匂いが辺りから漂ってくる。よく見たら辺りは鉄砲百合の群生地のようだ。 ここは何処だろう?辺りは薄暗くて見えにくいが奥の方に歩く俺。車に残された彼女が「何処に行くの!止めてよ!怖いよ!」と叫んでいる。声が上擦っている。 多分泣いているのだろう。そんな事をぼんやり考えながら更に進む俺。 潮の香りもしてきた。どうやらここは何処かの岬の様だ。ちょっと上った辺りに展望台も見える。 展望台に向けて足が進むと、またあの晩の悲愴感に襲われた。 俺はいつしか号泣しながら歩いていた。 「待ってよ!もういい加減にして!!」と背後から追いついた彼女が頭を叩いたから思わず「痛っ」と振り返った。 「何処に行くの・・・ああっ!」と短い悲鳴を上げる彼女。 「どーした?」と聞くと、小声で「足元・・・」と呟いた。 見ると俺の足元右側に作業服を着た男性がくの字型にうっぷして倒れている 顔の下には重みで潰れた百合の花が見える どす黒い顔面がもはやこの世に生命はない事を物語っていた。 さっきまでの悲愴感は消え頭が急に冴えたかと思うと辺りは腐敗した匂いに変わり、俺は吐いた・・・。 その後、警察署で事情聴取を受けて信じてもらえないだろう話をする俺を何故だか担当警官は「うん、うん」と聴いてくれ、少し安心した。 「検死中だからはっきり言えないけど、死因は心筋梗塞みたいだよ。君の話は信じ難いが、直接的に関係ないのは分かっているから、大丈夫だよ」と言って帰してもらった。 後日、分かった事だがあの日俺がいた駐車場は実は亡くなった男性の自宅の側にあった事を警官から聞いた。 その警官も「たまたま君が見つけてくれたから居場所を教えたかったかもね」と意味深に電話口で話していた。 そうか・・・だったら解決だよな。俺って霊能者みたいじゃん!なんてノリで、超能力に目覚めた主人公的でその時はニヤリとする気分だった。 でも大変な事にあれから沢山のモノを見るようになってしまった。 もう、笑えない。

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