
春の夜、僕と妹は祖父の山荘で過ごすことにした。二人だけの静かな時間を楽しむための短い旅行だった。山荘には古い料理本がたくさんあり、妹はその中から珍しいレシピを見つけて、夕食を作ることにした。
料理をしている間、僕はその料理本を眺めていた。その本には、材料の選び方や調理法だけでなく、奇妙なコメントやアドバイスが書かれていて、不気味な雰囲気を醸し出していた。「家族のために、特別な一皿を」といった一節が特に目を引いた。
夕食が出来上がり、僕たちは食卓についた。妹は自信満々に料理を盛り付け、僕はそれを期待しつつ食べ始めた。だが、一口食べた瞬間、口の中に異物感が広がった。何かが僕を引き寄せ、喉の奥に何かが潜んでいるような感覚に襲われた。
その時、妹の表情が不気味に変わった。彼女は笑っているつもりだったが、目は虚ろで、まるで別の誰かのようだった。「どう?おいしい?」と聞かれ、僕は無言で頷いた。だが、内心は恐怖でいっぱいだった。何かがおかしい。彼女は料理を作る際、何か特別なものを加えたのだろうか?
食事を続けるうちに、妹が言った。「この料理、本当に特別なんだよ。おじいちゃんの秘伝のレシピだから」と。その言葉に、僕の心臓が大きく跳ねた。まさか、あの本に書かれていたことが本当だとは思わなかった。特別な一皿とは、単に美味しいだけではないのだ。
次の瞬間、妹はさらに料理をおかわりしようとしたが、突然、彼女の手が震え始めた。料理を持ったまま、彼女の目がぐるぐると回り始め、僕は恐怖で動けなかった。彼女が僕に向かって叫んだ。「おじいちゃんが言ってた、食べなきゃダメだって!」
妹の言葉を聞いた瞬間、僕は全てを理解した。料理本に書かれた「特別な一皿」の正体。それは、ただの料理ではなく、僕たちの血を必要とする儀式だったのだ。それを知った時、すでに手遅れだった。
妹は笑いながら、目の前の皿に顔を埋めた。その時、僕は何かが喉の奥から這い上がってくる感覚に襲われ、意識を失った。気がついた時、山荘の中は静まり返っていた。妹の姿はどこにもなく、ただ料理本だけが、静かに開かれたまま残されていた。そこには「特別な一皿を、また次の家族へ」と書かれていた。
後日談:
後日談はまだありません。
この怖い話はどうでしたか?
chat_bubble コメント(0件)
コメントはまだありません。


