
中編
ボルネオのジャングルで
匿名 3日前
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おれの爺さんはもし生きてたら100歳近い戦争経験者だ。今の世の中怖いものなどなにもない、戦争に比べたら。それが口ぐせだった爺さんの話。
爺さんは陸軍で従軍していた。いろんな戦地に行った中でも爺さん的に1番過酷だったのがボルネオだったと聞いた。食糧も備品も少ないしマラリアにも罹るし今でも言えないことも色々あってとにかく最悪だったと。
ある時爺さんがいた隊が攻撃に遭って、退却中に爺さんははぐれてしまったらしい。一緒にいたのは爺さん含め3人だけ。獣道もないジャングルを元の部隊になんとか合流しようと歩いていた。
爺さん、隊員A、隊員Bがジャングルをかきわけていくと廃墟があった。近づくと鬱蒼と茂る草木の中にでかい岩がいくつかあって、その上に建っているようだ。用途はよくわからないが3階建てくらいの高さがあり、屋上に登って周りを見てみようということになった。
さらに近づくと分かったが、中は土砂が埋まって中から上がれるような状態ではなかった。爺さんらは木などを足掛かりにしながら屋上まで上がってみた。屋上は一面が土で、足を踏み入れると底なし沼みたいにズブズブ沈む。なんでかわからないが屋根が抜け落ちて、かろうじて外壁だけ残ったところに土木を詰め込んだような状態だった。左側は奈落、右側は底なし沼状態。歩けるのは30㎝幅くらいしかない。
爺さんを先頭に3人は外壁沿いに一列に並んで歩いていた。突然、「ウワア‼︎」と悲鳴が上がる。咄嗟に銃を向けると、Aが宙に浮かんでいた。横っ飛びにジャングルの奈落に落ちていく。一瞬のことで何が何だかわからなかった。爺さんには自分で飛び降りたようにしか見えなかった。何だ今のは?
はっと我に帰り「大丈夫かー⁈ おーい⁈」声を掛けるが何の音もしない。とにかく助けなくては。行くか戻るか。爺さん達2人はとりあえず先に進むことにした。降りやすいところとかあるかも知れない。
急ぎめに歩いていたら、後ろのBから「あっ」と悲鳴が上がった。ばっ、と爺さんが振り返った時には上半身で外壁にしがみついている状態だった。爺さんは訳もわからず飛びついた。引っ張り上げようとするが足場が悪くて力が入らない。ずる、ずる、とBはジャングル奈落に落ちていく。「○○(爺さん)、もうだめ、もうだめだ」その言葉を最後にその隊員もジャングルに吸い込まれていった。
「Aー‼︎Bー‼︎ おおーい‼︎」爺さんは必死に呼びかけたがジャングルは静まり返っていた。
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