僕の家の近所の人が体験した話です。 仮にその人をAさんとしておきます。 そのAさんの家の隣には、Bさん一家が住んでいました。Bさんと、旦那さん、そして、女子大生の娘さんの3人暮らしでした。 感じの良い人たちで、Aさんは、よく話すことがあったそうです。 ある日、Bさんたち夫婦は、女子大生の娘さんに留守を頼み、関東の方に旅行に行くことになったそうです。 その旅行に行った夜、Aさんが寝ようとしていたところ、家の前で小さな声がしました。 あまり聞こえなかったので、玄関の方に向かうと、若い女の人の声で、「白い花をください」と言っているのが聞こえました。 その声は、Bさんの娘さんの声だったそうです。窓からうっすら姿も見えていました。Aさんは、最初出ようとしましたが、こんな真夜中に来るはずがないと思い、そのまま寝てしまいました。 その次の日の夜も、Aさんは、白い花をください、と言っている声が聞こえました。何度も同じことを繰り返しているので、流石に怖くなり、翌朝に、Bさんの家を訪ねてみましたが、留守でした。 娘さんは学校に行っているから、いるはずがないと思いましたが、一応、Bさんにこのことを伝えておくことにしました。すると、Bさんは、娘と連絡がつかなかったから、今、家まで帰っているところだ、と答えたそうです。 Bさんが家に着き、チャイムを鳴らしても、娘さんは出てきませんでした。 鍵を開けて、Bさんが中に入ると、キッチンで、娘さんが倒れていたそうです。 Bさんは慌てて救急車を呼びましたが、娘さんはもう亡くなっていました。死因は心筋梗塞でした。 Bさんの娘さんが亡くなっていたのは、Bさんが旅行に行った日の夕方でした。 つまり、AさんはBさんの娘さんと会っていなかったはずなのです。 Aさんが会ったのは誰だったのでしょうか。 そして、その声の主は、どうして白い花を欲しがっていたのでしょうか。 Aさんは、この話を僕にしてくれた時、最後に花を備えて欲しかったのかも、と言っていました。