
中編
自転車チャンピオン
(;¬_¬) 2016年6月23日
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十数年前、私は、ネパールにいた。
今回は、その時、ネパールで遭遇した「自転車チャンピオン」の話をする。
私は、市内を観光するため、自転車を借りることにした。
店に行くと、ネパール人の青年が色々な自転車を紹介してくれた。
自転車についてとても詳しい青年だったので、
私が、
「とても詳しいですね」
と言うと、
彼は、
「僕は、ネパールの自転車チャンピオンだ!」
と言った。
確かに、店のある場所はネパールで人が集まる場所だし、このような場所にこの若さで店を出すんだから「よっぽどすごい人なんだな」と思った。
色々な自転車を紹介してもらった私だが、いい自転車はやはり値が張った。
お金がなかった私は、
「チャンピオン、色々紹介してもらって悪いんだが、なにぶん私にはお金がない。だから、一番安い自転車を貸してもらえないだろうか。」
と言った。
自転車チャンピオンは、爽やかに
「OK!」
と言って、自転車をもってきてくれた。
その自転車には、サドルがなかった。
立ちこぎ専門の自転車だった。
私は、正直驚いたが、せっかく出してもらったので
「Th、Thank you…」
といって借りることとした。
数分後、私の借りた自転車のサドルにはブロッコリーがあった。
私には立ちこぎ専門車で一日市内を観光するチャンピオンのような体力がなかったのだ。
チャンピオン・ブロッコリー号は快適であった。
私は、自転車にサドルがあることの大切さを知った。
私が自転車を走らせると、さすがはネパールチャンピオン所有の自転車である。
とても有名な自転車なのであろう。
多くの人がこちらを見て何やら話しているのが目に入ってきた。
私は、気にせず自転車を走らせた。
ある坂道にさしかかったとき、おばさんが近寄ってきた。
おばさんは英語が話せないらしくチャンピオン・ブロッコリー号を指さし、私の目を見た。
私は、
「あなたの言いたいことはわかります。やっぱり変ですよね。だって、サドルにブロッコリー刺さってるんですもん。そんなのするのは大阪のオバチャンくらいですもん。でもね、借りた自転車にサドルがなかったんですよ。だから、しょうがなくブロッコリーを刺したんですよ。もう、見なかったことにしてもらえませんか。私、外国人ですし、日本には日本の文化があるんだよ(怒)!!」
と言いたかったが、そのような思いを英語やネパールの言葉で伝える語学力がなかった。
私は、おばさんに、自分の気持ちを一言にまとめて
「TRAINING!」
と答えた。
おばさんは
「OK…」
といい、他のおばさんの所に戻って行った。
十数年の時を経た今、私は自転車チャンピオンの青年に問いたい。
「おまえ、本当に自転車チャンピオンか?」 完
*「私」が実際に体験した「本当にあった怖い話」シリーズ
① スーパー銭湯
② 扇風機おじさん
③ 喪黒兄
④ 「死」の概念
⑤ 自転車チャンピオン
⑥ スネオ系男子
⑦ ケンシロウ
⑧ 綱吉公の理想郷
⑨ 禁忌と懺悔
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