
上京して2年目の冬、友人たちに誘われて博物館の特別展示に行くことになった。大学の講義が終わり、寒い夜に外に出るのは憂鬱だったが、彼らの熱気に引き込まれ、ふらふらと後をついて行った。博物館に着くと、古いアートや歴史的な遺物が並ぶ中、特に目を引いたのは一台の古びたカメラだった。展示物の説明によると、かつてこのカメラで撮影された写真には、見えない存在が映り込んでいるという噂があった。
興味が湧き、私はそのカメラの前に立った。友人たちが笑いながらカメラを持ち上げ、セルフィーを撮ろうとした瞬間、突然周囲が暗くなり、展示室のライトが消えた。友人たちの声が消え、真っ暗な中に一人ぼっちになってしまった。心臓が高鳴る中、目の前のカメラが微かに光り始め、次第に明るさを増していく。恐る恐る近づくと、カメラのレンズ越しに何かが見えた。
それは、かつての来場者たちの顔だった。彼らは笑顔を浮かべているが、目がどこか空虚で、私を見つめているようだった。背筋が凍る思いで振り返ると、友人たちの声が聞こえなくなっていたのに、どこからか「戻ってこい」と囁く声が響いていた。恐怖で逃げ出そうとしたが、足が動かない。まるでその場に留まるように操られているようだった。
気がつくと、再び周囲が明るくなり、展示室には人々が戻ってきていた。友人たちは私を心配そうに見つめていた。私は冷や汗をかきながらカメラから離れ、何が起こったのか説明することができなかった。ただ、あのカメラが何かを見せたことは間違いないと思った。帰り道、心の中で何かがざわめいているのを感じた。
数日後、友人たちとの飲み会の席で、私は再びそのカメラのことを思い出した。「あのカメラ、なんだったんだろうね」と言った瞬間、彼らの一人が言った。「あれ、展示の噂通り、見えないものが映るらしいよ。実際、あそこで撮った友人の写真には変な影が写っていたって話だ。」その言葉に、背筋が凍った。私は彼らの顔を見ることができなかった。何かが私を見つめている。あのカメラが、私を見つめ続けている。
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