
長編
黒い靄(もや)
あ 2019年3月27日
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私が中学1年生の時の話です。
うちは3人家族で毎年お盆には母方の実家に
帰省しています。
私の母方の実家は東北にあり、農業で
生計を立てています。
家の敷地も広く、建物が3つあります。
1つは主に生活をする家(母屋というものでしょうか)。
2つ目は農作業に使う道具などを入れている建物。
そして1番奥に神社のようなものがあります。
鳥居も付いていて立派なお社が建っています。
私はその存在を小学5年生まで知りませんでした。
かなり奥のほうでしたし、道具を入れる建物が
大きかったので、わざわざ見に行かなければ
見えない位置だったのです。
私がその神社を知ったきっかけはいとこが
肝試しをしたいと言い出したことでした。
私にはいとこが2人おり、姉のSと弟のYです。
Sは私の一個上で怖いもの好きなくせに怖がりで
私と彼女はあまり気が合いませんでした。
だからSが肝試しをしたいと言ったとき、
どうせ途中でやめたいとか言い出すだろう、
と思って取り合わず、
「行きたいなら1人で行ってくれば」
と言いました。父も私が行かないと知ると
酒を飲み始めて行く気をなくしたようでした。
するとSはここで怖がってしまい、
結局それからその年も次の年も肝試しを
することはありませんでした。
2年後、私は中学1年生になり、Sは2年生に
なっていました。
私は中学入学時にスマホを買ってもらっていて、
格安機体で動作も遅く、画質も悪かったのですが
何しろずっと欲しかったので嬉しくて嬉しくて
そんなことは気になりませんでした。
その年は父の仕事が忙しく、お盆はゆっくり
したいとのことだったので、母と2人で
始めて新幹線に乗って母の実家へ向かいました。
駅に着くと母の妹Kが車で迎えに来てくれていて
Sもその車に乗っていました。
気が合わないタイプだとはいえ、久しぶりに
会えたので私とSの会話も弾み、気がつけば
母の実家へ着いていたのです。
その日は親戚が集まり、母の実家で宴会が
始まりました。
大人達は酒を飲みながら談笑していて、
毎年恒例のスイカ割りと花火を終えた後、
私たちはすることもなく、Yはゲームを始め、
Sと私は今日の写真をSNSに投稿していました。
突然Sが肝試しにいこうと言い出しました。
中学2年生にもなってまだそんなことを
言っているのかと呆れてしまいましたが、
Sが大人達に聞くと
Yは幼いので連れて行かないこと、
もう2人とも中学生なので2人でなら
行っていいと言われたようで、必死に
頼まれると断れなかったので、渋々Sに
着いて行くことにしました。
もう時刻は夜9時を回っていて、田舎ですから
街灯もほとんどなく、あたりは真っ暗でした。
私達は貸してもらった懐中電灯とそれぞれの
スマホのライトで地面を照らしながらゆっくり
歩いて行きました。
神社の前に着くと、2人で社の周りを一周し、
写真だけ撮って帰ることにしました。
私は心霊的なものを一切信用しないタイプ
だったのでさして怖くありませんでした。
淡々と一周し、それぞれ写真をお互いに
撮ってもらい、帰ろうとするとSが、
「あ、先にスマホ返して」と言ってきました。
お互いに相手のスマホで撮っていたので
スマホを交換したまま持っていたのです。
私がSにスマホを返すと、急にSは神社へ
近づき、私とS両方のスマホのライトを
つけたまま神社を連写モードで撮りました。
そしてライブラリをチェックしながら
「何か写ってないかなぁ」と確認し始めました。
またしても呆れ返りましたが、私もなんとなく
気になってスマホを返してもらい、1枚だけ
フラッシュをたかずに1枚だけ写真を撮りました。
見てみると、そこには扉が開いた社の写真が
写っていました。
慌てて顔を上げて見てみると扉は閉まって
います。
そのアプリは自動保存の設定をしておらず、
もう1回見てみようとすると、驚いた拍子に
タスクを消去してしまったらしく
見ることが出来ませんでした。
私が神社の存在を知る前から別の場所で
肝試しをしたことがあって、私がSを
怖がらせて泣かせるということがあり、
女同士なのに私はこっぴどく怒られたので
今回のことは黙っておこうと思いました。
画質が悪いカメラなので私の気のせい
かもしれないという思いもあったのです。
結局その日は何事もなかったように
大人達のいる母屋へ戻りました。
室内で遊んでいる時も写真を撮り、
何十枚と撮っていましたが会がお開きに
なった後、疲れ切ってしまったので
その日は確認することなく眠りにつきました。
翌日、起きてからその写真を確認すると
1枚だけ、違和感のある写真がありました。
Sが私に後ろから抱きついている写真
なのですが、黒い靄(もや)のようなものが
私の腹部についていたのです。
昨日の写真が頭をよぎりましたが、
影ができているのだと思って気にせず、
SにLINEで昨日撮った全ての写真を転送
しました。
その後、何かが起きることもなく、
お盆が終わり、私は家に帰りました。
Sが事故に遭い、左腕を骨折したと
聞いたのは2ヶ月後のことでした。
私はあの時の写真を見返しました。
黒い靄はあの時のまま、私の腹部に…
いいえ。多分そうではないでしょう。
あの黒い靄は、私の腹部ではなく、
私の腰のあたりに腕を回していた
Sの左腕にまとわりついていたのです。
Sが神社に光を当てて連写し、
騒がしくしたのが良くなかったのかも
しれません。
ただの偶然と片付けるべきなのでしょうが
私はあの日神社の扉が開いた写真を
見た時のヒヤリとした恐怖を忘れられず、
今でも時々思い出します。
あの扉から「何か」が出てきたのかも
しれません。
ちなみにこの後私はスマホを
Android機体からiPhoneに変えて、
写真は引き継ぎが面倒だったので
今のスマホにありませんし、前の機体は
下取りに出してしまいました。
今となってはあの写真を確かめることが
できません。
事故直後にトーク履歴も消しました。
あれから4年ほど経っていますが、
Sがそれ以降事故に遭ったり、
私に災いが降りかかるようなことも
ありません。
これは、私が実際に体験したことです。
まだ高校生で文章力が足りないと
思いますので、疑問に思ったことは
コメントで寄せていただければ回答
します。
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