
中編
ずぶ濡れの女
匿名 2022年8月15日
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これは自分の兄が体験したお話です。
自分には14歳離れた兄がいます。
自分が高校三年生の頃、兄は結婚し子供が産まれてからアパートを借り嫁さんとアパート暮らしを始めました。
兄はたまに実家に顔を出すのですが、その時に仕事の話等色々話をしてくれました。
兄は自衛隊だったのですが、自衛隊の宿舎には地下室があるらしく、そこは開かずの扉になっていて中に何があるのか誰も知らなかったそうです。
その地下室へ続く階段の下から赤ん坊の泣き声が聞こえたり、階段を降りて昇ろうとすると生首が上から転がってくる等、気味の悪い噂が絶えなかったそうです。
ある時、兄からこんな話をされました。
自衛隊の仲間とお酒を飲んでいると、突然周囲の空気が変わり辺りを見渡すと自衛隊仲間のみんなが時間が止まったように動かなくなったらしいのです。
自分も金縛りの様に体が動かなく、目だけしか動かせない事に気付いたそうです。
そして部屋の隅に目をやると髪の長い女性がこちらを睨んでおり、それを見た瞬間気を失ったと。
何でも目が光っていたとか言うもので、自分はそれを聞いて笑ってしまいました。
そんな漫画みたいなことあるもんかと。
それからなんです、兄が会うたびおかしな話をするようになったのは。
アパートで寝ていると足もとから声がする
ゴミ箱をあさる様なガサガサと音がする
子供が何かを見て泣く
掃除機がコンセント挿し込んでないのに勝手に動く
皿が棚から落下する
怪奇現象でありきたりなものですが、こんなことが頻繁に続くのだそうです。
そしてある時、兄から連絡が来てとうとう現れてしまった!と言ってきました。
その時の話です。
夜寝ていると布団が濡れていることに気付き目が覚めた。隣に寝ている子供がオネショしたのかなと思い横に目をやると隣には嫁さん、その隣に子供が寝ていたそうです。
なぜ濡れているんだ?と不思議に思って顔を上げたその時、目の前に髪の長い全身ずぶ濡れの女性が凄まじい形相でこちらを睨み付けていたと言うのです。
それを聞いた母が、姉に連絡し姉の知り合いでそっち系に詳しい人がいるって事で相談したそうです。
箇所は忘れましたが部屋のどこかに盛り塩をしてみてと言われ試したところ、盛り塩は朝には崩れており効果無し。
何度やっても結果は同じ。
そうこうしている内に、兄は脚の不調で職を失い嫁さんとも上手く行かず離婚。そして借金。
兄はアパートに一人でいるのが恐ろしくしばらく車検の切れた車の中で生活していたそうです。
兄が結婚してアパート暮らしを始めたのには理由があり、父と仲が悪かったので結婚を理由に早く出て行きたかったのです。
そのため実家に戻らず車の中で寝ていたのです。
母は姉の知り合いに会い、再度相談しました。
その人から
「盛り塩の上にこの7色の折り紙を細かく刻んで載せなさい」
と言われ、兄のアパートへ向かい指示通り盛り塩に7色の刻んだ折り紙を載せました。
すると怪奇現象はピタッと止んだそうです。
しかし、その効果もいつまで続くのかも分からないうえに借金も膨らんでしまっていた為、父と兄を話合わせ実家に戻すことにしました。
それから兄は自己破産はしたものの、脚も完治し職も決まり、今は再婚して元気に過ごしています。
あのずぶ濡れの女はアパートに住み着いていたものなのか連れてきてしまったものなのか分かりません。
ただそのアパートは今も存在しています。
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