
父から聞いた物語です。
彼が幼い頃、地方の片田舎で過ごしていました。昭和の時代の初め、まだ高度成長の波には乗れず、むしろ時の流れから取り残されたような静かな場所だったといいます。
子供の父は、近くの小さな湧き水で遊ぶことが大好きでした。友達と一緒に泳いだり、魚を捕ったり、虫を探したりして、日々を楽しんでいました。
その湧き水は、足首の上くらいまでの深さしかない、何の変哲もない場所でしたが、彼らには冒険心がありました。特に下流には、決して行ってはいけない場所があると、大人たちに言われていました。
ある日、好奇心に駆られた父と二人の友達は、下流へ向かうことを決意しました。深い森を抜け、川沿いを進むと、古びた木々が絡まり合っている場所に出ました。そこには、縄で囲まれた小さな円があり、「進むべからず」と書かれた札がかかっていました。それを見た彼らは、逆に興味をそそられ、境界を無視して進み続けました。
しばらく歩くと、小さな滝が現れました。1メートルほどの高さから流れ落ちる水は、周囲の静けさと相まって神秘的な雰囲気を醸し出していました。滝壺の脇には、不自然に立っている大きな石がありましたが、何も彫られていませんでした。彼らはその場所にガッカリし、すぐに引き返すことにしました。
しかし、数日後、友人の一人がその冒険を話してしまったのです。村の老人たちは驚き、すぐに父たちを呼び寄せ、滝壺の石の前で頭を下げさせ、「申し訳ありません」と十回言わせました。
その後、家族で移り住んだ先で、父は母から聞きました。あの滝壺はかつて、捨てられた子供たちの命の泉だったのです。多くの赤子が底に沈んでおり、村人たちはその魂が成仏するように、埋葬することなく水の中に残していたのだと。
時が経つにつれ、その話は忘れ去られ、ただ月に一度、出産を経験した女性が滝壺の石に手を合わせる習慣だけが残っていました。父は、忘れ去られることが良いこともあると、静かに締めくくりました。
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