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中編

開かずの音楽室の幽霊

匿名 2025年5月25日
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俺が臨時の常勤講師として小学校に勤めていたときの話。 その学校では、4階の端に音楽室があるが授業で使われることが全くと言っていいほどなかった。 音楽の授業では全学年とも普通教室で授業をし、学習発表会の学年練習でも体育館や多目的ホールなどを使っていた。 校舎の4階は音楽室の他にも空き教室がいくつかあり、3階までのフロアに比べて狭く、4階のフロア自体、ほとんど誰も近づかなかった。 少子化で各学年2クラスずつになってしまったが、昔は4階の教室も使われていたのか前後の黒板やランドセル棚など形は他と変わらない部屋が残っていて4階だけが廃墟状態だった。 そんなある日の放課後、学校の設備点検で4階の音楽室を見てくるように言われた。 他の先生の中には何か事情を知っているのか 「音楽室なら俺が行こうか?」 とも言われたが、音楽室がどうなっているのか気になっていたし肝試しがてらに丁度良いと思い、俺が1人で向かった。 辺りはだいぶ暗くなっていたが、別にビビりではないので気にせず4階に向かった。 とはいえ、4階にくると暗く静まり返った教室に少し心細く感じた。 音楽室の古めかしい鍵を開け、中を見ると俺は思わず叫んでしまった。 音楽室の窓の近くに誰かいるような人影があったのだ。 俺は慌てて電気をつけてさらに驚く。 窓の近くには白い洋服を着た女の子が立っていた。 長い黒髪に綺麗な顔、白いスカートなど可愛らしい女の子だった。 俺は驚き固まっていると、 「ここに誰か来るの久しぶり!ねぇ、ちょっと楽しもうよ!」 そう言って女の子は俺に近づいた。 女の子は小学5・6年生くらいの大人になりかけている若い子だった。 女の子は俺と手を握りながら体を寄せて、女の子の温かい肌の感触が伝わってきた。 俺より15才くらいは年下のはずなんだが、女の子は初対面の俺に積極的だった。 目の前には微笑む可愛らしい女の子。 この女の子が何者かは分からないとはいえ、可愛い女の子が目の前にいていい気分だった。 そのあと女の子は俺の体を抱いた。 女の子の体温や髪のいい匂いに興奮する俺。 しばらく女の子と仲良くし手を繋ぎながら、俺は最初の目的通り音楽室の点検をしていた。女の子は 「ここは異常ないよ。」 「ここ、前から痛んでるの。修理した方がいいかな。」 とか教えてくれた。 そして音楽室の点検も終わり、 「ありがとう。助かったよ。」 俺は女の子に言うと、 「うん。私も一緒にいられて楽しかった。」 そう言って微笑んでいた。 女の子が何者でこれからどうするのかは知らないが、一階までは送って行こうと思いながら部屋の電気を消すと・・。 そこには女の子の姿がなかった。 声もしないし、人影もなく、何の気配もない。 電気を消すとともに女の子は跡形もなくいなくなっていた。 俺は少し怖くなりながらも、音楽室に鍵をかけて早足で戻っていった。 職員室に戻ると、多くの先生たちは先に帰ったようだが『俺が行こうか?』と声をかけてくれた先生だけが残っていた。先生は 「音楽室で何か見たか?」 俺は今見た不思議な女の子の話をすると、 「やっぱり、ここの音楽室は出るんだよ。」 すると先生が言うには、むかし卒業を間近に控えて病死した女の子がいたらしい。 その子は在学中に重い病気になり入退院を繰り返し卒業式だけは出るつもりでいたが、その希望も叶わず卒業式の数日前に亡くなったという。 その女の子はピアノが好きで音楽クラブに所属し、病気になったあとも音楽の授業やクラブ活動を楽しみにして登校していたそうだ。 女の子が亡くなったあと、音楽室にはその女の子の霊が出るという噂が絶えずその音楽室が使われることはなくなってしまったようだ。

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