
長編
お化け屋敷
匿名 2019年1月26日
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これは私が20歳の時に実際に体験した話。
その日は、高校生の頃から付き合いのある友人達と宅飲みをすることになっていた。
その場所を提供してくれた友人(以降Aとする)は実家暮らしで、親は仕事の都合で次の日まで帰ってこないとのこと。
しかしこのA宅、本人曰く怪奇現象が度々起こるらしい。
磨りガラスに映る顔、0時ちょうどに鳴り響く電池の入ってない時計、誰もいない廊下を走り抜けて行く者、襖から覗く誰か。
寝ている時にしがみつかれたこともあると聞いた。
Aは幼い頃からこういった怪奇現象に見舞われており、どうやら霊を呼んでしまう体質らしい。
だが特に変わった様子もない普通の2階建の家。
その時はまだ、私が恐怖心を抱くことはなかった。
徐々に友人達が集まりだし、宅飲みは始まった。
1人遅れるとのことで先に始めることにしたのだが、1時間ほど経った頃、遅れてやってきた友人が不思議そうな顔を浮かべ部屋の前に立っている。
そして、唐突に「今日はこの人数だけ?」と聞いてきた。
その友人の話によると、一階に誰かいた、とのこと。
Aの家は階段を上がると目の前に洗面所がある。
つまり階段下が鏡に映るのだが、その鏡に顔を半分だけ覗かせた誰かが自分を見ていたとのこと。
どうやらAも同じ体験をしていたらしい。
最もAの場合は、目が合うとその何者かがニターッと笑うらしいが。
少し気持ちの悪い物を感じたが、気のせいということにして、無理矢理に飲み会を楽しんだ。
しかしそれをキッカケに友人の1人が怖い話をしだした。
最初の心霊体験はその友人の話から始まったようにも思える。
何でも、家の外に現れる幽霊のため、窓や扉を開けなければ問題ないとのこと。
そして伝染する話らしい。
その話の詳しい内容は後日短編で記載しようと思うが、その話を聞いた夜中、友人の1人がトイレで遭遇したらしい。
そして窓際に寝ていた他の友人は窓の方に何者かの息遣いを感じたとのこと。
酔っ払っていただけだろう、とその時は思ったのだが、実家に戻った私もその何者かに遭遇した。
しかし私の場合、聞いた話と違う点があった。
その日、私しかいないはずの家で2階の床を叩く音が聞こえてきた。
そう、外に現れるはずの何者かは室内に現れたのだ。
どうすることも出来ず、その日は一階で震えながら夜を過ごしたことを覚えている。
しかし怪奇現象はそれだけでは収まらなかった。
仕事を終え夜中に帰宅した私は、洗面所で着替えていた。
その日も私1人。
すると突然耳鳴りと共に寒気と鳥肌が起こった。
その状態に気持ち悪さを感じたが、気にしたら余計に怖くなると思い意識しないようにしていた。
だが、音が聞こえる。
それも、洗面所の真上にある私の部屋から。
泥棒だろうか。
しかし泥棒にしてはあまりに音を出しすぎではないか。
なぜなら音は絶え間なく続いていたのだ。
恐らく、あれは足音だったと思う。
ずっと歩いている。
5畳に満たない私の部屋は、物を置けば歩き回れるほどの広さもない。
だがその何者かは延々と歩き続けている。
行ったり来たりする様子もないソレは、想像するに部屋の中心にあるテーブルの周りをぐるぐると回っていたように思う。
まるで私を呼んでいるように。
ソレは部屋から出れないのだろうか。
もし部屋から出れたら。
家のどこにも逃げ場所なんてないように思えた私は、天井を思いっきり殴った。
恐怖に支配されると私は攻撃的になるのだなと、他人事のように考えていたが、殴った途端に音がピタリと止まった。
霊の存在に気付いてはならない。
見えてること、聞こえてることを知られてはならない。
そんな言葉が頭をよぎった。
もしかしてソレは、確かめるためにそんな行動に出たのではないだろうか。
恐怖に支配された私はそれを払拭したく、勢いのまま部屋に駆け上がり扉を開けた。
何もいない。
いつもと変わらない部屋。
ネズミか何かだったのだろうか。
いや、そう思わないと気が狂いそうな状態をどうにも処理出来なかった。
無理矢理にそう思い込み、いつもは電気を真っ暗にするのだが、その日は電気を付けたままベッドに入った。
もしそれが霊ならば、私が気付いた時点で逃げ場所なんてないように感じ、その時は半ばヤケクソ気味だった。
目が覚めた。
部屋は街灯に照らされ薄っすら明るい。
夜中だろうか。
起き上がろうとした私は起き上がれないことに気付く。
金縛り。
日頃の疲れから金縛りに似た状態が起こる私は、いつもと同じように金縛りを解く。
そこで気付いた。
私の上に何か乗っている。
街灯に照らされた室内の中、真っ黒の何かがそこにいた。
しかし寝ぼけていたためか、大した恐怖心も湧かず、上半身を起こし得体の知れない何かに私は手を伸ばした。
その瞬間、フッと身体が軽くなった。
見れば真っ黒の何かはいなくなってる。
起きながら夢でも見たか、と思いながら再び仰向けに体勢を戻した。
両の指を交差した手の平のようなものが頭頂部に置かれている。
その瞬間、私は布団の中に引きずり込まれた。
次の日の朝。
私の下半身はベッドからずり落ち、掛け布団が床に落ちていた。
後日、Aから怪奇現象の1つが起こらなくなったと聞いた。
後日談:
- 最後まで読んでくれた方は、何故その家自体をお祓いしないのか、とお思いでしょう。 実は、以前お祓いしてもらってるようなのです。 ですが、お祓いしてくれた霊媒師の方がそのすぐ後に病気になりそのまま亡くなったらしく、それ以来頼みたくても頼めないとのことでした。
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