
長編
話してはいけない
匿名 2013年1月22日
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当時の私は高校も中退していて、親からも見放された状態だった為、
遊びよりも生活資金って感じで、朝から夜までバイト三昧でした。
週1の休みには、息抜きで時々友達と遊びに出かけたり、1日中寝ていたり。
当時は高校中退だったから、DQN友達くらいしかいませんでしたけど。
バイトを始めた時からコツコツ貯めていたお金で免許をとりました。
母が新車を買うため、古い軽自動車を無理やり押し付けられ、
その車で夜中のドライブが日課になっていました。
バイトの疲れなんか気にしないくらい、運転するのが楽しかったです。
夏頃に、バイトの休み前日の夜に友達と
「心霊スポットの廃病院に行こう」
となり向かったのですが、期待を裏切るように霊とは会えず。
そこに住み着いていたホームレスのおっさんにびびらされたくらいで、
変に驚かされ、仕方なしに「帰ろう」ってなりました。
その帰り道、車内で怖い話をしようってなったのです。
友人Aは怪談が大好きで沢山話をしてくれたのですが、
聞いているだけで満足の私に、Aは
「お前も何か話せよ」
と言ってきたので、家に居た時に携帯サイトで見た話を思い出して、話を聞かせました。
話の内容は、稲川の番組で放送中止になった話です。
確か内容は戦時の、とある女霊の話だったのですが、詳しくは書けません。
要するに、「誰かに話したらいけない」系統の話です。
当時の私は、そんなの信じてる訳もなく得意げに皆に聞かせました。
これが間違いだったんです。
怪談話で帰りの車内は盛り上がって、そのまま各自宅へ友人を送り届け、その日は解散で終わりました。
未だ慣れない夜の運転に疲れた私は、体のだるさを感じつつ家までの階段をのぼり、
鍵を差し込み回せば、ドアの取っ手に手をかけて玄関を開けようと引いたんですが──
ガチャン。
……といって開かない訳。
「鍵閉めていったよね??」って疑問抱きながらも、
もう一回鍵を取り出して玄関を開けて家に入りました。
早くお風呂に入りたくて、取り敢えず部屋の電気つけたらびっくり。
空き巣に入られたように部屋の中が荒れてました。
クローゼットの洋服やテーブルの上にあったものは床に散らばってるしで最悪です。
早く寝たかったものの、しょうがなく警察呼んで事情聴取を受けました。
いろいろ聞かれて気分は最悪の事情聴取を終えてシャワー浴びて、
「明日バイト休みだから、明日片付けよう」と思って寝室のベッドに飛び込んで、その日は寝ました。
そして夜、金縛りに。
胸元に誰か乗っているのかと思うくらい圧迫されて、
更に首を締められるような感覚で、目は閉じていたのですが、
顔の前には気配を感じて吐息がかかる。
気持ち悪いし苦しいし、目を開けたくないのに自然と開きそうになり恐怖を煽られるも、
疲れたからゆっくり寝たい気持ちが大きく苛々しはじめて、心の中で
『眠いんだよ!! 寝かせて!!』
って叫んだら、簡単に金縛りがとけました。
体を起こし、あたりを見るも何もいなく。
「なんだ、呆気ない」と思ってたら、耳元で
「あなたの体ちょうだい」
って囁かれ、ゾッとした瞬間、意識を失ったようで、気が付いたら朝でした。情けない。
そんな事があった次の日の昼間。
蒸し暑くて窓を開けながら部屋の掃除をし終えてテレビ見ていたのですが、
急に恐怖心が襲ってきて、家にさえ居たくもなくなった為、
友人に電話をし、急いで車の鍵を持ち、家の鍵を閉めて出ていきました。
急に出向いたわりには快く迎えてくれて、夜まで友人宅に居座り、
恐怖心どころか、昨日車内で話した事もすっかり忘れました。
さすがに明日バイトだし、長居するのに罪悪感もあり、礼を言って家に帰る事に。
家について中に入ると、変に家の中の風通しが良くて、焦げ臭い。
電気をつけてない室内は真っ暗で何も見えなく、
「どうせ近所の誰かが魚でも焦がしたんだろ」と思って電気をつけて窓の方を見ました。
窓を見てゾッとしました。
エアコンとその周りの壁が真っ黒で、カーテンが半分以上燃えたらしく塵になって床に。
網戸に火種が飛んだらしく、燃えた跡のように大きな穴があいてました。
気持ち悪くて窓を閉めようと手をかけた瞬間、目の前に──
紫色の着物に身を包み、左脚・右腕がなく、火傷を負った女が、私を睨み付けて立っていて。
目を見開き、急ににやりと笑いかけてきて、思わず小さい悲鳴をあげて尻餅つきました。
ニタニタニタニタ笑っていて、「私、死ぬかも」って思ってたら、スッと女は消えました。
暫く、恐怖でその場に座り込んだままの私がいました。
後日、エアコンを新しくし、業者に取り付けてもらい、カーテンも網戸も新調しました。
「話してはいけない」と忠告文字もあったあの話をしたから、
こんな事が起きたのだろうかと考えるも、確信がない為「偶然だ」って思うようになって数週間後。
バイト先に行く途中、車内のバックミラーにふと目をやると、
紫色の着物を着た女が後部座席に座っており、変わらずニタニタと笑っておりました。あの女です。
私は短い悲鳴をあげて視線を前に戻した瞬間、
後ろから車に突撃されて、全身打撲とあばらを骨折し、病院に入院。
突撃された瞬間、「ゲタゲタ」とでかい笑い声が聞こえたのを、いまだに覚えております。
それ以来なにもないですが、
もう「誰かに話してはいけない」系統は語ってはだめだなと、思い知らされました。
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