
長編
見ちゃだめよ。
じやい 2018年8月30日
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微かに覚えている幼稚園の時の記憶です。
私の幼稚園は、地元でも有名な神社の敷地内にありました。
年長さんの夏の日、簡易プールで遊泳会がありました。みんな楽しくワイワイしてました。
その時、園庭のほうに目をやると日傘をさし白いワンピースを着た黒髪の髪の長い女性がこちらを、微笑みながら見ていたのです。
私「先生、あそこに女の人が居るよ。」
先生「何言ってるの。園庭の門閉まってるでしょ。誰も入れないし、誰も居ないよ。」
私「だって、ニコニコしながら」
先生「見ちゃだめよ。早く戻りなさい!!」
先生がちょっと、怒った気がしました。
そして、暫くしてプールの淵を掴もうとした時でした。
勢い良く腕を外に引っ張り上げられたのです。
目の前に現れたのは、顔面に血が垂れ流れている青ざめた先程の女性でした。私はビックリして体が硬直したのを覚えています。
次の瞬間
先生「ダメェ~~!!離しなさい!!」
凄い勢いで私の腕を掴み返し、私を抱え上げたのです。
先生「この子は、ダメよ。連れて行かせない。」
そう言うと、その女性はフゥっと目の前で消えたのです。怖かったのを覚えています。
その日を起点に、度々このような事が多々ありました。
家では毎夜、夜中3時~4時頃にかけ50kgはある大きな木のタンスがガタガタ揺れだし止まらない。
また、私の枕元に女性が立ち、寝ている私の顔を覗きこむ姿を母が見たり、不思議な事が立て続けに起きていました。
それでも、昼間は幼稚園で先生がいつも守ってくれたので、その時は安心でした。ある日、
先生「A君、今はお家は大丈夫?」
私「えっとね、夜ね、へんなの。」
先生「A君、明日は参観日だから、お母さんとお話ししようか。」
私「うん!!分かった。」
参観日、先生は母と二人で長い間、深刻そうに話をしているのを、遠目に見たのを覚えています。また、母はシングルマザーだったので、参観が終わると仕事に戻る為、私は先生と私の家に行くことになりました。
先生「エレベーターやめて、階段で行こうか。」
私「うん。4階段だよ。」
先生「4階ね。分かった。4階か。」
エレベーターに目をやろうとした私の顔を先生は、両手で押さえました。
階段を上がり、家に着くと先生が私の手を強く握ったのです。家の鍵を開け、ドアを開けた時、ブワァ~~と生温い風が部屋の中から玄関外に抜けて行きました。幼稚園帽も勢い良く、外に飛ばされました。
私「あっ!!帽子。」
先生「帽子は、大丈夫だよ。後で取りに行こう。中に入ろうか。」
中に入り窓を確認しましたが、しっかり戸締りされていました。
先生「ちょっと、窓を開けて部屋の空気を入れ替えようか。」
私「うん。先生も手伝って。」
私は背が低かったので、窓鍵はイスを使って開けていたのです。
先生「今日は、先生が夜ご飯作るね。お母さん、遅いみたいだから。今日は何にするかもお母さんに、聞いてるから一緒に作ろうか。」
私「うん。今日はね、たぶんね、カレーだよ!!」
先生「すごいね、何で分かったの?お母さんとちゃんと、お話しするの?」
私「毎日、必ず1日のことはお話しする。後は夜ご飯のことも。」
先生「そっか、じゃ、早速作ろうか」
時間は夕方6時頃でした。先生と楽しくカレーを作ったのも覚えています。
それから、2時間位
母「ただいま。ちゃんとしてたかーい!!」
私「お帰りなさい。今日ね、先生と夜ご飯作って食べたよ。美味しいから、お母さんも早く。」
先生「お帰りなさい。遅かったですね。いつも遅いんですか?」
母「今日は特に。すみませんでした。息子を任せてしまって。」
それから、母と先生は話をしながら家の中や寝室のタンスやベランダ、浴室を見て回っていました。私は夜も遅いので、睡魔に勝てずソファで寝て閉まったのです。その間、母と先生が何をしていたのかは知りません。
翌日、幼稚園で
先生「昨日は、カレーおいしかったね。また、一緒に作ろうーね。」
私「うん。」
先生「昨日は、ちゃんと眠れた?お母さんは、大丈夫だった?」
私「大丈夫だった。あとね、ガタガタしなかったよ。」
先生は、安堵した感じでした。それからも、遠足や運動会では、先生が何かからいつも守ってくれたので、楽しい幼稚園生活が送れました。
そして、卒園式の日でした。
卒園式が終わり、また先生と母が長話をしていました。その時の記憶では、母が大泣きをしていたのを覚えています。
先生「A君、これからも何かを見ても知らないふりをするの。あと、誰にも言っちゃダメよ。」
私「何を?」
先生「んー、例えばプールの時に園庭で見たような事とか、お家で起きたことかな。」
私「分かった。」
そして、先生は最後に念を押すように言った。
「あれっと思っても、見ちゃだめよ。」
その後、私達は小学校に上がると同時に、この家を出ました。その後はどうなったのかはわかりません。
あれから、十数年経ち母とお酒を飲む機会があり、この話をしました。
母「あの時は、本当に先生が居なかったら、あんたはあの世に引っ張られて行ってたんだよ。本当に大変だったんだから。今でもゾッとするよ。先生ね、幼稚園の隣の神社の巫女もやってて、霊感も強いから心霊で相談に来る人が後を絶たない位、有名だったんだよ!あんたを見て、助けなきゃって思ったみたいよ。」
母の話では、カレーを作った日、私がソファで眠った時、突然、タンスがガッタン、ガッタンと左右に揺れだし、テーブルの食器も一斉に落ちたそうです。
そして、先生が私に近寄るとソファの裏下から、全身血まみれの女性、男の子が現れたそうです。
その瞬間、先生はとっさにプールの時に見た女性だと分かったようです。
先生は、お経を唱えながら、塩水を巻き、根元を探したそうです。そして、見つかったのは、寝室の60mc位の黒いシミだった。そのシミに、塩水を巻き、お経を唱えながら、洗い流したそうです。そうすると、現れた親子の霊は、白く光りながら、消えたそうです。
先生の話では、この親子はシングルマザーで、生前この部屋で生活をしていた。でも、生活の困窮で息子をシミのあった場所で、首を絞めて殺し、母親は屋上(8階)から飛び降り自殺をしたそうです。
恐らく、私達親子と境遇が似ており、羨ましかったのと、私が可愛いかったから、息子のお友達にしたかったので取り付いた。タンスもその母親が、危害を加えようとしてやっていたそうです。
約30年以上経った今でも、私に霊感があるのかわかりませんが、本当に見ちゃだめな物があった時、出来るだけ『見ない、知らない、目を合わせない』を今でも先生に言われた通り実行しています。
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