
私の趣味は釣りでした。家の近くにある港は、静かで釣りにはもってこいの場所でした。冬の寒い夜、私は釣り竿とバケツを手にし、いつものように港に向かいました。
その晩も魚が釣れるのを待ちながら、穏やかな波の音に耳を傾けていました。すると突然、釣り糸が引っ張られました。
「何だ?」
驚きつつも、力強く糸を引き上げました。何かが必死に抵抗しているのがわかります。しばらくの間、力比べが続きました。相手は驚くほどの力で、私は必死に踏ん張っていました。
「負けるもんかっ!」
その瞬間、両手でしっかりと竿を引き上げました。釣り上げたものは……。
「うひゃっ!」
心臓が凍りつきました。私が引き上げたのは、腐敗しきった人間の腕でした。青黒く膨れ上がり、まるで生きているかのように見えました。
すぐに警察に通報しました。彼らが到着すると、私の話を聞き、驚愕の表情を浮かべました。
「20キロ先の町で、遺体の一部が見つかっています。その腕もその一部です。」
「でも、引っ張ってたんですよ?」
警官は苦笑いを浮かべたものの、私は恐怖で何も笑えませんでした。あの日の出来事は、今も私の心に深い傷を残しています。夜の港での恐怖は、決して忘れられないものとなりました。何が本当に引っ張っていたのか、それが今でも分からないのです。夜釣りは、私の趣味から恐怖の記憶へと変わってしまいました。夜が訪れるたび、あの腕のことを思い出すのです。何かが、まだ海の底で待っているのではないかと。
夜釣りはもう二度としないと心に誓ったのに、なぜかその記憶が私を引き戻すのです。恐らく、何かが私を呼んでいるのかもしれません。恐怖の誘惑に、私は抗えないのです。
それ以来、私は決してあの港に近づくことはありませんでした。だが、心の奥底には、また釣りをしたいという欲望が潜んでいるのです。何かが私を試すかのように。
その夜、引き上げたのは、ただの腕ではなかったのかもしれません。
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