
俺が高校生のとき、船で海を渡り通学していた。
俺の家は港の近くにあり、フェリーに乗って30分程度で対岸の港に行くことができた。
対岸の町に行きたい高校があったことと、船で通学するって面白そうだと感じその高校に行くことを決めた。
朝、自転車に乗って港に行き、自転車とともに船に乗る。
対岸の港から降りたあとは、町を自転車で進み、丘を登ると俺の通う高校がある。
毎日海を渡り通学し、帰りも船に乗って戻ってくる。
2学期になると、仲の良い女の子ができた。
彼女は汐見(しおみ・仮名)、同じ高校1年で他のクラスの子だが、ふとしたきっかけからよく話すようになった。
汐見とは高校のある町で、放課後に一緒に過ごした。
夕暮れが迫ると、汐見とともに港まで自転車を走らせた。
船内から港を見ていると、汐見が名残り惜しそうに俺を見送ってくれた。
夕闇の中、俺を見送ってくれる女の子の姿は何か切ない感じもした。
汐見はいつも俺を見送ってくれた。
あるとき、俺は汐見に俺の町に来ないか誘ってみた。
だが、汐見はなぜかそれを拒否した。
はじめは、お小遣いの問題や知らない町に行くのがこわいってことかなと思って、俺が汐見を迎えに行き一緒に船に乗ることも提案したが、それでも汐見は微妙な様子だった。
汐見から聞いた話では、汐見が小さい頃に汐見の父が港から船で出かけて行ったまま、戻って来なかったという。
汐見は母と、港から父が船に乗るのは見ていて、そのときは仕事で出かけてその日のうちに帰ってくるはずだった。
だが、父はいつまで経っても帰って来ないし、何か事件や事故などに巻き込まれたという連絡もなかった。
父は夜逃げしたのか、或いは何か事件にでも巻き込まれたのか、未だに分からないそうだ。
それ以来、汐見は船がトラウマになり、港町に住んでいながらフェリーに乗ったことが一度もなく、俺が住んでいる地域に車などの他の手段で行ったこともないそうだ。
俺が港から出るとき、汐見が心配そうに港までついてきたり、いつも悲しい顔に見えたのはそういう理由もあるのかと切なくなった。
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