
長編
堤防の暗渠
しもやん 2日前
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河村の家が近かったこともあり、懐中電灯はすぐに準備できた。真夏の午後3時すぎ、俺たちは決死の覚悟で水路の入り口を潜った。
内部は外の熱気とは対照的に、気味が悪いほど涼しかった。トンネルの中央は足首が隠れるくらいの水流が奥へ向かって流れており、両側にぎりぎり1人が歩けるくらいの通路がある。俺たち3人は左側の通路をおそるおそる進んでいった。懐中電灯を持った俺が先頭になり、その次を河村が、しんがりを林が務めた。
懐中電灯で見通せる範囲はごく限られていた。奥を照らしても光は拡散してしまい、内部がどうなっているかは判然としない。足元を照らすしかないのだが、見えるのは黒ずんだ狭い足場と、音もなく流れ込んでいく水流だけ。3人の会話はなく、サンダルが路面をこする耳障りな音だけが響いている。
俺はすぐにでも引き返したかったが、それを最初に言い出したやつが臆病者認定されるのは目に見えている。ことに林より先に弱音を吐くのだけは避けたかった。たぶん河村も似たような心境だったのにちがいない。俺たちはつまらない意地の張り合いで自縄自縛に陥ったまま、10分以上も暗渠の内部を歩いていたと思う。
水路は浅い角度で徐々に下っているようだった。それとは気づかないほどに勾配がつけられており、水路は右に左に忙しく進行方向を変えた。1本道である限りは迷う気づかいはないと判断して、俺たちは進めるところまで進もうと取り決めをし、どんどん歩いていった。進んでいくごとに温度が下がっていくような気がしたのを、いまでもよく覚えている。
やがて分岐路に出くわした。Y字型に水路がわかれている。ついに堪えきれなくなったらしい河村がここらが潮時だと主張したけれども、意外にも林が言下に否定した。分岐路があったとしても水の流れで出口の方向はわかる、迷わないから探検を続けようと言うのだ。俺と河村は意地になった。林なんかに当たり前の事実を指摘されたのが癪に障ったのだ。
ああいいぞ、探検を続けようじゃないか。
それにしてもへんだ。俺はこの水路が尋常ではないことを悟り始めていた。いったいこの穴はどこまで続いているのだろうか。もうゆうに30分近くは歩いている。どこにつながっているにしろ、そろそろ向こう側に出てもよいころあいだった。もしかしたら九十九折に地下へと伸びているのだろうか。いったい誰がなんの目的で、こんな長大な水路を掘ったのだろうか。疑問は尽きなかっ
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- すごいですね、中途な終わり方も怖さ引き立ててます、途中で亡くなったのですかね。。みを
- この後どうなったの????ばん
- 度胸あるな。三つ鳥居
- 川村も林も初めから存在しなかった。 と言う事かな?咲 桜花
- 終わり方、変じゃない?続きがあるの?K