
中編
お神輿
、 2021年11月5日
chat_bubble 0
6,173 views
これは、私がまだ4,5歳の頃の話です。
ちょっとうろ覚えなので、「たぶんそうだった」点もあります。
夏休み、父方の実家に帰省していました。
帰省した祖父の家は田畑をやっていたので、敷地内に農機具をしまう小屋やビニールハウスがあり、玄関の前は車が簡単にUターンできるぐらい広くなっています。
そして、その敷地から外に向かう下り坂があり、坂を降りるとそのまま道路に続いています。耕運機がそのまま田畑へ行けるようになっているのです。なので玄関に立つと結構遠くまで見通せました。
このころは、毎年、夏と冬に必ず帰省しており、そのたびに近所の2つ年上のあっくんとよく遊んでいました。
実家に到着した翌朝、朝ごはんを食べたあと、私は
「あっくんの家に遊びに行く!」
と行って家を出ようとしたら、
祖母が
「あっくんは病気で寝ているから行ってはダメ!」
と強めに言ってきました。
とても残念だったことを覚えています。
その日の夜、突然私は高熱を出して寝込んでしましました。
家族とは隔離され、祖母がつきっきりで面倒を見てくれたそうです。
実はその熱が出たことも、寝込んだことも、私は覚えていません。
ただ、一つだけ覚えていることがあります。
それは、熱が出て寝込んでいるときに見た夢です。
とてもリアルだったので、しばらく現実と夢の区別がついてなかったです。
いま考えると夢だっただろうと思います。
その夢の中で、私は祖父の家の玄関前に立っています。
時間はかなり遅い時間で感覚的には深夜です。明かりは全くありません。
すると、こちらに向かってやってくるお神輿とハッピを着て踊っている人たちが遠くに見えます。
提灯を持っている人がいるので、暗闇にボウっと明るい集団が浮かび上がっている感じです。
とてもキレイで神秘的でした。ただ、不思議なもので音が全くしません。
「きれいだね〜」
と私はつぶやきました。
するとはじめは気づきませんでしたが、父親が隣に立っていました。
逆側をみると兄もいます。
「なんだ、みんなで見てたのか」
と安心してお神輿の方に目をやると、いつの間にか目の前まできてました。
玄関前の広場でお神輿を担いだひと、周りで踊る人がぐるぐると回っています。
踊りを踊っているひとはクネクネと動きながら軽やかに飛び跳ね、お神輿も上下にゆっくり揺れながら回ります。
それぞれの人自体が発光しているように明るく見え、みんな色白に見えました。
私はすごく楽しくなってきて、踊りに加わろうと思って前に出ようとしました。
すると突然、祖母が後ろから私の体を羽交い締めにして止めます。
私は
「なんでダメなんだよ〜!!」
とダダをこねて泣き叫びます。
父も兄も祖母も無言です。
するとゆっくりお神輿と踊りの人たちは敷地の外へと向かって移動をはじめました。
そのときお神輿にあっくんが乗っていることに気が付きました。
ですが、表情が全く無く、こちらにも気が付きません。
あれ?なにか様子がおかしい。。。
と感じ、なぜか声がかけれませんでした。
ただ、とても寂しく悲しくなったことを覚えています。
その後、熱が引き、またあっくんのところへ遊びに行こうとすると、
父、母、祖父、祖母そろって
「まだちゃんと治ってないから遊びに行っちゃダメ!」
と止められました。
そして実家から自宅へ帰ったあとに、あっくんが亡くなったことを知らされました。
お神輿の話を父親にしたらはぐらかされて、真面目に聞いてもらえなかったこと覚えています。
そして中学生になったとき、急に祖母から
「あんた小さい頃、熱出して死にかけたこと覚えている?外に出たい、外に出たいって駄々こねて、言う事聞かなくて。。外に出ないように押さえつけないといけないぐらい、あんたあばれたんだからね。ホントに、、、私が守らんかったら死んでたんだよ。無事に大きくなってよかった。」
と昔ばなしをされたことがありました。
その時はそんなこと覚えてないよと言っていた気がしますが、
最近また思い出して、そうか、あれはあっくんがお別れを言いに来たのではなく、
あっくんを連れに来た集団が、私も迎えにきたのではないのか?
と考えることがあります。
まあ、本当の答えはわかりませんが、とりあえず、いろいろ危機もありながらまだ生きているので感謝です。
この怖い話はどうでしたか?
chat_bubble コメント(0件)
コメントはまだありません。