
中編
パチンコ屋で起きた奇跡
匿名 2025年4月24日
chat_bubble 0
3,691 views
俺はパチンカスだ。
その日も気合いを入れてパチンコ屋に向かう途中、なんとなく神社で拝んでから行ってみたらどうだろうと思い立ち、先に神社へと足を運んだ。
作法もよく分からなかったが取り合えずお賽銭を入れて全力で祈った。神様どうか助けて下さい!
不思議と本当に勝てる気が沸き上がって来た。
よし!行くぞ!と祈る手を離し後ろを振り返るとそこには、髪を結った着物姿の女性がいた。全く気配がなかったため驚いて変な声を出してしまった。
俺が『あっ、スミマセン、長かったですよね…。』と照れながら言うとその女性はニコリと微笑んでこう言った。
『今日は絶対に大勝ちしますから諦めてはいけませんよ。』
え?パチンコのこと?何故知ってんの!と不思議に思ったが変な声を出してしまったこと等の恥ずかしさが上回り、『ありがとう御座います!頑張ります』と返事をしてその場を退散しようとしたら、何と目の前でその着物姿の女性が消えた。
あまりの出来事に愕然とした。こんな事って本当にあるんだと思った。幽霊を初めてみた。幽霊にしては綺麗な人だった。
何だかもうパチンコどころじゃない気もしたが、『諦めてはいけませんよ。』の言葉を胸に俺はパチンコ屋へ凱旋した!
勝ったり負けたり、一進一退の攻防だった。
『諦めてはいけませんよ。』とはこのことか!絶対に諦めないぞ!その一心だった。
数時間が経って、俺は軍資金とは別に最後の電気代と書かれた封筒に手を付けようとしていた。
戒めのため絶対に手を付けないと約束した正真正銘最後のお金だった。
このまま退陣するか…それとも…
ふと声が聴こえた気がした。
『今日は絶対に大勝ちしますから諦めてはいけませんよ。』
俺は封筒を開いて最後の勝負に出た!
結果は、完全敗北。スッカラカンになってしまった。
借りられるお金などもう何処にもない…。
心は完全に折れて諦めてしまった。
同時に怒りがこみ上げて来た。
じゃああれはいったい何だったんだ!あの幽霊に俺は騙されたってのか!俺がいったい何をしたって言うんだよ!
怒りと憎悪に震えながら家路へと向かっていると、辺りが騒がしい。火事だ!
まさか俺ん家じゃねえだろうな!?
そのまさかだった。
木造ボロアパート全焼!
幸いにして死者こそ出なかったが家財一式大切な物も皆失ってしまった…。
俺は本当に何もかも失ってしまったんだと絶望した。
出火原因は不明だが俺の隣の爺さんの部屋からだとのことだった。
人はそれでも生きて行く。
罹災証明書を取得して公営住宅に一時避難していたが、これを機に実家へ戻るという案が浮上した。
潮時かもな…そんなことを考えているとあの幽霊のことを思い出した。いや、手続きやいろんな物事の整理をしている最中ずっと頭の隅で考えていたんだ。
あの幽霊、もしかして俺を助けてくれたんじゃね?と。
俺はパチンコに負けるといつも真っ直ぐ家に帰るタイプだ。お金がなくなるからだ。そしてふて腐れて寝る。
もしあの幽霊の助言がなければ俺は家にいて焼け死んでいたんじゃないか。
距離や時間や行動パターンからそう結論づけた。
もう一度あの神社に行ってみよう…少し怖かったが再びあの神社へと足を運んだ。
感謝の気持ちもあったので賽銭箱に50円玉を入れた。そして祈った。
『幽霊さん、助けてくれたんですよね?お陰で命拾いしましたよ…お礼を言います、ありがとう御座いました。ただ、ずっとこれだけは謎なんですが、諦めさせないやり口で帰宅時間を遅らせるより、爆勝ちさせて閉店まで打たせるやり方は出来なかったんですか?嘘付きましたよね?』
返事はなかった、振り返っても何処にも幽霊の姿はない。ただその時爽やかな風が吹いて、不思議ともう一度頑張ろうと心に誓った。
この怖い話はどうでしたか?
chat_bubble コメント(0件)
コメントはまだありません。