
中編
夜道
匿名 2017年2月28日
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これは私の母が体験した本当のはなしです。
私の母はもう12年程看護師の仕事をしています。
当時、新人だった母は遅くまでオペした患者さんの臓器を洗ったり、部屋の片付けをしたりしていました。
いつも帰ってくるのは深夜1時半~3時の間。夜道はとても暗く、いくら車でと言ってもおっかなびっくりだったと言います。
だが私の母も霊感というものがあり、普通に見えちゃう人。だからお化けなんて怖くないといつも口癖の様に言っていたのを覚えている。
その日も仕事が終わり、家に帰ろうと車を走らせた。
家までの道はそう遠くはなく、車で5、6分と言ったところだろうか。
けど母が小さい頃から苦手な道、地元の人ならみんな知っている細く狭い道…「まさがの坂」という道を通らなければいけないのが唯一の不満だった。
そこは昔から霊の通り道と言われ、昼間でも薄暗く、通る人なんて滅多にいなかった。
「うわぁ…今日もここ通るんだ…嫌だなぁ…」
他の道からも帰れない事はないが、私と弟(当時1歳8ヶ月と0歳)を自分の母に預けてるもんだから少しでも早く帰りたかったのだそう。
(よーし…帰るか…)
と、思った時…ライトのちょっと先に腰を曲げ、手拭いを被ったお婆さんがチョコチョコ歩いている。
(お婆さん…?こんな時間に…?)
少し不思議に思ったが母は気にせず運転を続けた。
そしてお婆さんを追い抜いた時、既にお婆さんの姿はどこにも無かったという。
1度車を停めて、振り返ってみるもやはりいない。
きっと別な道を通って帰ったんだろうと思ってその日はそのまま家に帰った。
翌朝、母はばあちゃんに昨日あったことを話した。
「へーんなお婆さんだったよ」
するとばあちゃんは不思議そうに言った。
「んー…それは変よ?だってあそこは一本道。アンタもよく知ってるじゃない。」
「あ…そういえば…」
そんな事を話しているうちに出勤時間間際になり、母は急いで家を飛び出した。
その日も帰り道を帰ろうとするとお婆さんが昨日と同じように歩いている。
(んー…亡くなってる方ならすぐに分かるはず何だけどなぁ…)
母は頭を悩ませながらそのまま帰宅した。
またまた次の日の帰り道はいつもとは違った。
いつもと同じように車を走らせまさがの坂まで来るとやはりお婆さんが歩いている。
母は気にもせず通り過ぎようとした。すると、窓が【コンコンっ】と鳴ったのだ。
びっくりして窓の方を見るとお婆さんが立っている。手拭いで隠れていて顔は見えなかったそうだ。
「あのぉ…どうしました?」
母は聞く。
「……」
お婆さんは何も言わない。
「お婆ちゃん誰さんって言うの?」
「小野瀬…」
この辺は小野瀬なんていくらでもある。どこの小野瀬さんか分かれば乗せていくのになぁ…っと思った母。
するとお婆さんが口を開いた。
「アンタ…明日この下の大きな道路には気を付けな」
それだけ言うとすぅーっと消えてったという。
何だったのだろう…今のは生きている人だったのだろうか…
次の日、母は高熱を出した。だが働かなければ養えないと言ってだるい体を起こして車を走らせた。
病院へ続く大きな道路を通ろうとした時、パトカーと救急車が見えた。
その道路は母の学生時代から事故や自殺が絶えず、こんな事はしょっちゅう。
【あー、また運ばれてくるのかなぁ…】
と思いながら病院に急いだ。
その日はたまたま早く仕事が終わり、夕方の6時頃帰ってきた。
次の瞬間、母はNHKのニュースを見てギョッとした。
「今日、朝の六時頃。海岸病院付近の〇〇町で72歳の小野瀬〇子さんが猛スピードで走ってきた軽自動車に轢かれ、亡くなりました。小野瀬さんは頭に手拭いを被り、エプロンをして散歩をしていた所に軽自動車が突っ込み、即死とのこと。」
母はばあちゃんに
「お母さん!この人!私が話したのこの人!」
するとばあちゃんは
「きっとアンタに知らせたかっただろうね。この人私の先輩で旦那さんにも先に逝かれて子供もいないし…寂しかったんだよ…」
その事故があってから母は職場を変え、隣町で精神科と看護師をやっています。
日勤の時と遅番の時はいつもそこにお婆さんが今でも立っているそうです。
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