
雪が舞う冬の夜、Y夫婦は廃棄されたガソリンスタンドに立ち寄った。新しい車を探すために、思いつきでやってきたのだ。外観は荒れ果て、内部には古びた車両が数台、薄暗い明かりの中でほこりをかぶっていた。店員は見当たらず、静寂が辺りを包み込む。
「このスタンド、もう営業してないみたいだね」とYさんが言うと、妻は「でも、もしかしたら掘り出し物があるかも」と、楽しそうに答えた。二人は車の間を歩きながら、何気なく話し続ける。
その時、Yさんの目に留まった一台の車があった。古いセダンで、モデルは最近のものだが、異様な雰囲気を漂わせている。「これ、なんでこんなところにあるんだろう?」
妻が隣の車を指さし「こっちも見てみない?」と誘ったが、Yさんは何かに引き寄せられるようにそのセダンへ近づいて行く。車の窓越しに、運転席が目を引いた。
「なんだこれ……」
運転席には、白髪の男性の生首が逆さに浮かんでいた。Yさんは思わず後退りし、心臓が激しく鼓動する。恐る恐る妻に振り返ると、彼女もその異様な光景に気付き、顔が青ざめていく。「Y、どうしたの?」
「他の場所を見に行こう」とYさんは急いで言い、妻を引き連れてその場を離れた。彼女は不安そうに後を追い、何が起こったのか説明を求めたが、Yさんは言葉を失っていた。
帰り道、Yさんはその奇妙な出来事を思い返しながら運転を続けた。家に着くと、ようやく彼は妻に全てを打ち明けた。「あの車に、生首が……」と告げると、妻は驚くことなく言った。「あの車、値段が異常に安かったよね。あれ、何か理由があるに決まってる。」
Yさんはその言葉に、何か得体の知れない恐ろしさを感じた。次の日、彼は他の中古車店で新しい車を見つけたが、あの廃棄されたガソリンスタンドの光景は頭から離れなかった。安い理由が何であれ、あのセダンには二度と近づくまいと心に誓った。だが、時折夢の中で生首が逆さに浮いている光景が蘇り、目が覚めると冷や汗をかいているのだった。
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