
長編
僕とSさん
匿名 2025年7月7日
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人の手が行き届いていない荒地でいつものような駐車場もないはずでした。
さらに30分ほど車を走らせ、ついに街灯がなくなりました。勾配が急になり、外気温が下がったせいか、やけに窓が曇ってきました。降ってきた小雨を払おうとワイパーを一度動かしたその時。
「ドンッ!!」
くぐもった鈍い音が車内に響きました。明らかに、トランクからでした。
僕は意識が飛びそうになるほど驚き、跳ね上がりました。心臓が暴走し、壊れそうなほど早く脈打っていました。
かなりパニックでしたが、黒服の男たちに置いていかれるわけにはいかず、ひたすら無心でアクセルを踏み続けました。
「ドンッ! ドンドンッ!」
その間も、車体を蹴るような音が一定間隔で鳴り響いていました。
何度も意識が飛びそうになり、生きた心地がしないまま30分、黒服の男たちの車が停車し、追って僕も停車しました。
そこは、あたりを木々に囲まれた、古い小屋の前でした。
納屋のような小さな作りで二階建て。外壁は本物なのかただの塗装なのか分からなかったのですが、木目がみえました。
僕は車を降りると、すぐさま黒服の男たちに近づき、ボストンバッグから何度も音がしたことを伝えました。途端、黒服の男たちの顔が目に見えて硬直し、後ろを向いて2人でひそひそ話し合っていました。そして、
「A、それは忘れろ。」
と、とてつもなく間抜けなセリフを言い放ち、トランクを開けました。このとき、ボストンバッグは静かでした。黒服の男たちに命令され、僕は泣きそうになりながらボストンバッグを男たちと共に担ぎあげ、そのまま小屋の中に入りました。
小屋の中は真っ暗で、薄寒く、埃が待っていました。進んでいくと、小屋の右奥に、地下に続く階段あり、僕たちはそこを降りました。階段を降りると、そこには分厚そうな鉄扉が構えていました。黒服の男のひとりが鍵を取り出し、扉につけられていた3つの南京錠を開け、扉に体重をかけると、重々しい音と舞い散る埃とともに、ゆっくりと開きました。扉の奥は一畳ほどの狭い空間で、奥に、更に地下に降りる階段がありました。その階段を降りると、また先と同じような鉄扉がありました。黒服の男が三つの南京錠をあけ、扉を開くと、今度は猛烈な異臭が鼻を襲いました。
腐った生ゴミなんて非じゃない、嗅いだことのないような悪臭でした。僕はよろけそうになりながら、なんとか持ち堪え奥へ進みました。
奥に見えたのは
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