
長編
僕とSさん
匿名 2025年7月7日
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は見た目通りかなり捻くれた性格をしていたので、同じように基本的に鬱々としている自分ととてもウマがあい、政治的な話から猥談までなんでも話しました。そんなこんなでアルバイトを初めて1ヶ月たったころには一緒に酒を飲む仲にまでになりました。Sさんの家にあげてもらえるようになり、
「人と酒を飲むなんて何年ぶりだろうなぁ」
なんてSさんが言っていたのを覚えています。
物心ついた時から父親のいなかった僕は、父親がいたら、こんな感じだったのかなと、妙に感慨深くなることもありました。自分の中でSさんはいつしか、友達のような父親のような、特別な存在になっていました。
アルバイトを始めて半年が過ぎたとある日。
その日は、○〇山の中腹にある夜景スポットの駐車場が待ち合わせ場所でした。
いつものように五分前に着いて携帯を見ると、Sさんからメールが届いていました。
「体調がすぐれないから今日は休みます。すまない。」
半年間、Sさんが仕事を休んだことは一度もなかったので少々驚きましたが、体調不良なら致し方ないと切り替えました。
そして22時丁度、いつもの白いワンボックスが到着して、黒服の男が二人降りてきました。
男の一人が早くしろといわんばかりにトランクを開け、僕もいつものようにリュックを運ぼうとしました。
しかし、それはいつもと違いました。
トランクにあったのは黒い小さなリュックではなく、黒い巨大なボストンバッグでした。縦が160から170センチほどあり、押し込まれる形で積まれていました。
僕は思わず黒服の男を振り返ろうとしたところ、彼らはあろうことか僕の両隣にきて、ボストンバッグに手を添え、掛け声とともにボストンバッグを勢いよく持ち上げました。
「おい、ぼさっとするな。お前も持て」
ボストンバッグを移し替え、各々車に乗り込みました。
さらに、その日は黒服の男たちが運転する車についてこいとの命令を受けました。いつも男たちはそそくさと帰るのに、です。
運転中、すぐ後ろに積んであるボストンバッグに何が入っているかが僕の脳内のすべてを占めていました。重さと大きさから、そんなことはないと思いつつも、いやな考えを振り払えませんでした。
本当にその時は、心の底からおびえていました。
一時間ほど車を走らせると、民家はまばらになり、木々と田が増え始めました。どうやら××山に向かっているらしいことは分かりましたが、××山は
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