
短編
麦わら帽子
ゆー 2日前
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幼い頃の話。当時は某田舎の借家に住んでました。家族は両親と弟、そして、僕の四人でした。あれは、幼稚園に通い立ての頃だったと思う。夜になると、必ず同じ夢を見るという不思議な体験をしたんです。夢の中では、僕は家の中を逃げ回り、僕以外の家族(祖父母や親戚まで)が、全員、麦わら帽子で、顔を隠した状態で、バットを手に、僕を追いかけては叩きのめしていました。麦わら帽子の頭頂部が、ちょうど、仮面のように顔の前に来るような感じで、顔を隠した家族に、僕は毎晩追いかけられては、メチャメチャに殴られていました。現実に、虐待されたという事実はありません。そんな恐ろしい夢を、毎日、毎日、見るものだから、当時の僕は夜になるのが、怖くて、就寝時間になると、泣き喚いて、なかなか、寝ずに、親に怒られたそうです。親には確か、それを話したけど、子供の見た夢の話など、いちいち、真剣には聞いてくれるはずもなく、「早く寝なさい」で終わりでした。
夢は一週間近く続いたと思います。麦わら帽子で顔を隠した家族が、無言で、バットを手に、どこまでも追って来る。家族が、である。あんな恐怖はなかなか、味わえるものではない。
そんな悪夢が続いた、ある日。夢に、一人だけ、麦わら帽子で顔を隠していない女が現れます。女は僕の手を引き、風呂場の窓から、外に出してくれました。すごく優しい女性でした。が、一度も会った事がなかったと思います。歩き出す僕を彼女は、ずっと見送ってました。それ以来、あの悪夢を見ることは二度とありませんでした。
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- あの女の子は優しかったのですね!優しくしてもらった分自分も優しくしてあげましょう!夢