
中編
記念写真
匿名 2日前
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味の悪さを感じました。
けれど、それだけでは終わらなかったんです。
それから数週間後──
私は妙な夢を何度も見るようになりました。
夢の中で、私はなぜかカメラを構えていて、あの裏手の通路をのぞいているんです。
そこには、やはりあの後ろ姿の女性が立っている。
彼女は、毎回少しずつこちらに向かって振り返ろうとしている。
最初の夢ではほとんど動かなかったのに、2回目、3回目と、だんだんと肩がこちらに向き、髪の隙間から、顔が見えそうになる。
でも、目が覚める。
毎回、そこまでです。
ただ、その振り返り方が本当に“リアル”なんです。
夢だとわかっていても、汗をかくほど緊張する。
最初は偶然かと思いましたが、5回、6回と続くうちに、これはおかしいと感じるようになりました。
そうしているうちに、また別のことに気がつきました。
──あのフィルム。
そのモノクロ写真のプリントだけ、なぜか湿っていたんです。
他の写真はカラッとしているのに、あのコマだけ、ふちが微妙に波打っていて、紙も少しだけ冷たいような感触があった。
保存していた引き出しの中まで、じんわりと湿っていた気がします。
どうしても気味が悪くなって、私はそのプリントだけ捨てようとしました。
でも、手が止まった。
なんというか……
捨てたら、本当に振り返られてしまう気がしたんです。
結局、その写真は今も部屋の奥にしまったままです。
夢は、まだときどき見ます。
そして今日も、彼女は少しだけ、前を向こうとしていました。
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