
秋の夕方、古びた廃校には、かつての生徒たちの噂がつきまとっていた。特に「旧校舎の廊下」は、地元の高校生たちにとって恐れられる場所の一つになっていた。廃校は長い間放置されているが、肝試しに訪れる者が後を絶たない。
優斗、健二、そして真奈の三人は肝試しのために廃校へと向かった。事前に調べたところ、旧校舎の「廊下で誰かの声を聞いたら絶対に返事をしてはいけない」と言われていたが、彼らはそれをただの噂だと思っていた。
校舎に足を踏み入れると、薄暗い廊下が目の前に広がっていた。湿った空気と古い木の匂いが漂い、壁には剥がれたペンキが残っていた。何も起こらないまま進んでいると、突然、背後から誰かの声が聞こえた。
「…優斗?」
振り返ると、そこには健二と真奈しかいない。二人も驚いたような顔をしていた。
「今、声が聞こえなかったか?」健二が不安そうに言った。
「気のせいじゃない?」真奈は笑おうとしたが、その笑顔はどこか引きつっていた。
三人はそのまま廊下を進んだ。すると再び、今度ははっきりとした声が響いた。
「おーい…」
それは、確かに健二の名前を呼んでいた。
「誰かいるのか?」健二が声を張り上げた瞬間、空気が重くなった。
「…まずい…」
優斗と真奈は息を呑んだ。健二の返事が、噂の「絶対に返事をしてはいけない」という状況に合致してしまったのだ。
次の瞬間、廊下の奥から何かを引きずるような音が聞こえた。懐中電灯を向けるが、目の前にはただの闇しか見えない。しかし、その闇の中に何かがいる気配を感じた。
「逃げよう!」優斗が叫び、三人は廊下を駆け出した。しかし、健二の足が突然止まった。
「体が動かない…」健二の表情が歪む。まるで見えない何かに捕まれているかのようだった。
「健二!」真奈が手を伸ばすが、その瞬間、廊下の奥から長い黒髪の影がゆっくりと現れた。顔はぼやけていて、まるで霧のようだった。
「お前…呼んだよな…」
低い声が響く。次の瞬間、健二の体が浮き上がり、何かに引きずられるように奥へ消えていった。
優斗と真奈は必死で校舎の外へ飛び出した。しかし、振り返った時には、健二の姿はどこにもなかった。
その後、警察に通報したが、健二は行方不明のままだった。彼のスマホは校舎の前で見つかったが、その中には不気味な音声が録音されていた。
「おーい…おーい…」
何度も呼びかける声の最後に、小さくかすれた健二の声が残っていた。
「…助けて…」
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