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長編

頭のおかしい友人

たけ 2022年7月9日
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 高校で知り合った俺の友人の中に飛びぬけて頭のおかしい友人がいる。  そいつを仮にNとして、Nは普段は物静かでけだるげな雰囲気を出しているが一方で酒を飲んだ時とホラー関連の話になった時だけ饒舌になり周りの空気なんて全く気にしなくなるような男だ。  そして、こいつのどこが頭がおかしいのかと言うと、そいつはホラーに対する行動力が常軌を逸している。  一人で心霊スポットに向かい一日夜を過ごしたり、ひとりかくれんぼなんかも実践したり、本当にホラー関連になると目がない。  そして、この話はつい最近俺がNに突然心霊スポットに連れていかれた時の話。  時刻は11時。もうそろそろ寝ようかなと思っていたところにNから突然電話がかかってきた。  Nからの電話に珍しく思い電話に出てみると、近くのスーパーの駐車場にいるからここまで来いと言う事だった。  正直だるいとも思ったがNの事だから俺が行くまでずっと待つだろうし何度も電話をかけてくることは予想できたので渋々ながら俺は服を着替えてスーパーまで向かった。  スーパーにつくとNは車にもたれかかりながらタバコを吸っていた。  「タバコくさっ!非喫煙者と会うときはタバコ吸うなよ」  「すまん」  謝りはするがタバコを吸うのをやめようとはしないNはいつも通りのNで、タバコを吸い終わるまでは会話はせず、ようやく吸い終わったかと思うとNは「まあ乗れよ」っと言いながら自分はそそくさと運転席に乗り込んだ。  俺が乗り込むとNはすぐに車を発進させどこに向かうのかを教えてくれた。  「心スポ行くぞ」  「は!?一人で行けよ!」  「一人だとだるいんだよこの場所」  一体どういうわけなのか理由を聞いてみるもNは「着いたら説明する」の一点張りで全然理由を話そうとしないので諦めることにした。  ここで言っておく、俺はNとは違いホラーが大の苦手だ。  心霊写真や心霊動画はもちろん、そういった話を聞くだけでもダメだし、テレビでホラー特集が最近放送されなくなって踊り喜ぶほどにはホラーが嫌いだ。  しかし、このNにそういったことを説明しても折れてくれないことも俺は知っている。  めんどくさいことにこいつは一度決めた事は絶対に曲げないと言うなんとも生きづらい性格をしているので、俺は早々にスマホゲームをして目的地まで時間を潰すことにした。    途中眠っていたようでNに起こされて時刻を見ると深夜1時になっていた。  片道2時間ほどかかる随分遠くに来てしまったようだった。  「はぁー、本当に嫌だ…」    ぶつぶつと文句を言っている俺を置いて、Nはトランクから荷物をごそごそと出していた。  そして、「はい」っと手渡された物、バール、ライト付きのヘルメット、軍手、予備のライト、マスク。  「…お前何する気?」  「心スポ探索って言ってるだろ」  「それはわかってるけどバールとか何に使うん?」    「それはな…」っと、ようやくNは俺を連れてきて理由を話してくれた。  どうやらこの心スポの入り口と言う入り口には木が打ち付けられているようで、前に一人で来た時に入れなかったため、俺を呼んで二人がかりで木を外して中に入ろうという事だった。  「お前、これ不法侵入じゃん。俺心スポも嫌だけど犯罪も嫌なんだけど」  「バレる事無いから大丈夫だろ。ほら、早く行くぞ」  そういってヘルメットをかぶってバールを肩に担ぎながらタバコを吸う月明りに照らされたNの姿は絵になっていて俺は心底イケメンと言うものを憎んだ。  Nの後ろをビクビクとしながらしばらく進むと建物が見えてきた。  その建物は2階建てになっており、海沿いの山の中にひっそりとある海が見えるレストランだったようだ。    「ここ、これ外すぞ」  「まじでここヤバいって、雰囲気まじで幽霊出るってこれ」  「だろ?」  そう言ったNはニコリと嬉しそうに笑った。  そして、Nと一緒に格闘する事15分、ようやく木をすべてはがし終わりドアを開けることができた。  ドアの向こうは厨房になっており、俺たちが開けたドアは裏口のようだった。  厨房内には道具などが残されており、かまどなんて物もあった。  しかし随分と荒らされているようで、机などは倒れ、床には誰かが飲み食いしたであろうゴミが散乱していた。  そんな幽霊がでる雰囲気満載の所に、Nは物怖じすることなくズカズカと中に入っていきスマホでパシャパシャと写真撮影を楽しみ始めた。俺はと言うと、Nの後ろにぴったりと張り付きビクビクと震えていた。  しばらく写真撮影を楽しんだ後、Nは次の部屋へと続く両開きのドアの所に向かった。  「ん?なにこれくそ固い」  グイグイとドアノブに力を込めるがビクともしない。  俺は神様に感謝した。ありがとう、ドアノブをロックしてくれていてと。  諦めて帰ろうぜ?そうNに提案しようとした直後、ドカッ!と凄まじい音を立ててドアが開いた。  「うわぁ!!」  「あ、悪いこんなに大きい音出るとは思わなった」  Nは開かないドアにイライラしてヤクザキックをかましたところ開いたようだった。  「お前本当に!そういう事するときは何か言ってからしろよ!」  「ほんとにごめん、俺もビビったわ」  まじでふざけてる。  一瞬バールでしばいてやろうかとも思ったが、今は頼れる仲間なのでグッと堪えNの後に続くことにした。  次の部屋は予想通りホールだった。ここもだいぶ荒らされており、赤い絨毯なんかもびりびりに引き裂かれており、より雰囲気が増しているように感じた。  「何か映らねえかな、というか出てきてくんねぇかな」  「なぁ、まじでもう帰ろうぜ?」  「ん?いや外で待っててくれてもいいけど?もう木はがしたし」  あの厨房を一人で戻って一人で外で待てるわけがないだろと言いたかったが、こいつにそんな常識を言った所で通じないだろうなと諦め、俺はまた厨房の時と同じくNの背中に張り付きビクビクと震えている事しかできなかった。  ようやくNはホールの写真も撮りつくしたようで、次の場所に向かい始めた。  次の場所は廊下になっており、両サイドにドアが数か所取り付けられている場所だった。  そしてその時は突然やってきた。  廊下の中央あたり、黒い影がスーッと右側のドアに入って行ったのだ。  「うわあぁぁ!?」  俺は咄嗟に来た道に方向転換して数歩走り出していたが、Nは違った。  Nは「いたいたいたいた!!」っと大声をあげてその黒い影が入って行ったドアに向かって全力疾走して行ったのだ。  「は、え、はぁ!?」  そのあまりにも頭のおかしい行動に一瞬混乱したが、俺は怖くて超ビビっていたが、震える足に力を込めてNの後を追った。    「おいN!ほんとにヤバいって!おい!」  Nが入っていた部屋に俺も勢いをつけて入ると、Nは地べたに這いつくばってベッドの下やクローゼットの中をガサゴソと忙しそうに探っていた。    「くそ、もう消えた…なんで幽霊って角曲がったり部屋入ったりして消えんだよ、うぜぇな」  幽霊に対して悪態をつくNを見てさすがに恐怖感は無くなってしまい、不思議と笑いがこみ上げてきた。  そんな笑っている俺をNは不思議そうに見ていたが、すぐに立ち上がり「まだどっかにいるかもしんないから捕まえるぞ」そのセリフにまた笑らってしまった。  その後は本当に何事もなく、すべての部屋を見て回り、一階、二階と制覇した俺たちは最後に建物の外観の写真を撮って帰る事にした。  今回の件で俺は少しホラーに対して耐性ができた気がするし、Nの頭のおかしさも再認識できたのでむしろ来てよかったのかもしれない。貴重な体験もできたしね。  そういった感想を持って、今回の心スポ探索を終えたかったのだが。  「あの女、飛び降り自殺だろうな」  「え?なに?」  「さっきの部屋に入って消えた奴。ここのレストランの近くに自殺の名所があんだよ、海に飛び込む。それで、そこで自殺した奴は大体ここのレストランから見える浜に漂着するんだってさ。水でびちゃびちゃで砂ボロボロ落としてたし頭がなんか潰れてたからおそらくだけど飛び降り自殺だと思う」  こいつにはどうやら黒い影ではなくしっかり、くっきりとその姿が見えていたようだった。  こいつはそんな恐ろしい姿の幽霊を見たって言うのに「いたいた」と大はしゃぎで追いかけていたという事実を知り、こいつの頭はおかしいという事を再々認識できたし、こいつの事が怖くなった。  生きた人間の方が怖いっていうの、あれって本当なのかもしれない。

後日談:

  • 以上が俺が先週の日曜日に体験した話です。 Nが言っていたことが本当かどうかはわかりませんが、四国のどこかにあるのでぜひ行ってみてください。

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