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長編

廃病院にて

匿名 2021年3月15日
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とても暑い夏の定番と言えば怖い話。 高校三年生の夏休み、私は仲の良い友人数名と《百物語》をする事になった。 Goo◯le先生で検索すれば出て来るだろうが、 ざっくり説明すると100本の蝋燭を用意して夜中の12時辺りにやると言う物だ。 100本の蝋燭はお祖母ちゃんの家から拝借し、 足りない分は買った。 そして八月の暑い日、私と幼馴染のA、B、Cの 四人で一人につき25話を話す事にした。 正直怖くなかった。 一回聞いた話や作り話ばかりで怖いどころか笑いを誘った。 100話全部を話し終わっても全く怪異とかそんな物が起きる気配も無いので、私はもっと涼しくなれる場所へ行こうと提案した。 そのもっと涼しくなれる場所と言うのは我が家から車で十分くらいの距離にある今はもう廃病院と化し立派な心霊スポットになったX病院と言う所だった。 車の運転免許を取っていたAは母親の乗っていたカローラで我が家まで来ており、全員を乗せて もらう事にした。 件のX病院はとても不気味で、本当に霊が出そうな場所だった。 Aはスマホのビデオカメラを起動し、謎の実況中継を始めた。 私は持って来ていた懐中電灯で足元などを照らす。 BとCは笑いながら写真を撮っていた。 「じゃ、噂の廃病院に行って来ま〜す!」 「Aの顔めっちゃウケるwww」 *ここから会話中心 A「ねー何にも出ないね」 私「それな。結構期待してたんだけどな〜」 A「私もー。てかBとCは?C確か霊感あったよね?」 C「え、呼んだ?」 A「C霊感あったよね?」 C「うん。さっきからめっちゃいるよ」 B「え、マジ?ヤバくねww」 C「まーでも危害を及ぼす奴じゃ無いと思うから平気っしょ」 B「なら平気か〜。あ、そう言えばなんだけど、さ……ここって、霊安室とかがめっちゃ『出やすい』らしいよ」 私「え、そうなの?知らなかった」 B「てゆーか、霊安室が一番『危ない』んだって」 A「んじゃ後で行く?」 C「うぅ…危害を加えそうな霊が沢山いそう……」 私「ま、なんとかなるって」 C「そうだといいんだけどさぁ…」 あの時、霊安室へ行かなければ良かった。 A「あ、階段だ………え?は?」 私「何どうしたのA。何か見つけた?」 A「…これ、って位牌…だよね?」 Aが指差す方向を見ると、それは確かに位牌だった。 B「何でここにあんの…めちゃ怖いんだけど」 C「っえ………」 私「前に来た人が悪戯で持ってった、とか?」 A「かもね」 C「手、合わせとく?」 B「うん、そうしよ」 私「その方がいいと思う」 私達は位牌に手を合わせ、霊安室へと向かった。 私「うわ暗い…」 A「ちゃんと照らしてよ」 私「分かってるって」 C「ねぇもう帰ろ?ここヤバいよ。私達危ないって」 B「もう少ししたら帰るから」 突然、Cが怯えて泣き出す。 私「ちょ、あのB、えっとC頼むね。A、Cどうする?」 A「車に連れてったら?これ車の鍵。勝手に行かないでよね?あ!ねぇしゆか、あそこ気になるんだけどちょっと見てみようよ」 私「え、うん。BにCをよろしく」 B「分かった。後で報告ヨロシクね」 私「はーい」 C「ヤバい、ヤバいよどうしよう。ごめんなさい、ごめんなさいごめんなさいごめんなさい……!」 B「C、一旦車行こ?」 C「うん。ありがとB…」 あのCの様子は、嘘や演技などでは無かった。 私「ちょっとA、どこいるの?」 A「しゆか。私はここだよ?」 私「BとC、車行ったよ」 A「そっか。ねぇしゆか。こっち来て?ここ本当にヤバいかも」 私「何〜?……………え、」 私は言葉を失った。 そこには。 夥しい量の血と位牌があった。 霊安室なら位牌があってもおかしくないと思う。 だが、何故か早く行かなければ、逃げなくては。そう思って咄嗟にAの腕を掴み病院の外へと向かう。 途中、誰かに追いかけられている様な感覚になり、更にスピードを上げる。 とにかく怖かった。 位牌はともかくとして何故血があんなに? あの階段の位牌で引き返せば良かった。 後悔先に立たずと言うけれどあれは本当だ。 Aの車に乗り、助手席に座るとAに文句を言われた。 A「ねぇ何で急に走り出したの?」 私「あそこ…危ない、気がした、から」 C「A、しゆか。さっきBと一緒にこの病院の事 調べたんだけどさ… あの霊安室、新興宗教に使われてたんだって。 何かその宗教ってのが『人を生き返らせる』とか を目標にしていたらしくって不治の病で亡くなった人で実験を行っていたとか書いてあった…」 私「え、じゃあさ…もしかして今もここの施設に来て実験?してるのかな」 B「そうかも。……ねぇしゆか、A。血とかって…見てない、よね?」 A/私「見たよ?」 B「マジか…いや見たからって何か起こるわけじゃ無いんだけどね?でもその血って、生き返った人の吐き出した物らしいよ」 A「…触らなくて良かった」 私「それな」 その後、私達は一旦コンビニに寄ってから 私の家に帰った。 帰ると同居している姉が待ち構えていて、何故か日本酒と塩をぶっ掛けられた。 姉はその記憶が無いと言う。 翌朝、四人仲良く塩と日本酒の匂いが付いた。  後日談だが、あの廃病院は壊されホテルが建てられた。しかし、 そのホテルでは怪奇現象が絶えないと言う。

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