
長編
ヘイテンゴ(体験談)
匿名 2016年10月27日
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これは私が5年ほど前に体験した話です。
当時の私は、とある飲食店の雇われ店長をやっていました。
お店の閉店時間22時を過ぎ、全てのお客様がお帰りになられた事を確認して、アルバイトの女子大生kさんと私の二人で、クローズ作業をしています。
kさんはと言うと、おしゃべりの大好きな女性で、大学での事や彼氏の事など普段、彼女の身の周りで起こった事を事細かく、私に話し掛けてきていました。
私 「kさーん、とりあえず手を動かして片付けしよっか?」
kさん「ハ〜〜イ店長!」
私 「……………。」
彼女は明るく人当たりも良かったのですが、いかんせんおしゃべりをしだすと止まる事がありませんでした。
私は、kさんとの話しを軽く流しつつ、片付けも終わりに近づき、残すところはホールの椅子をテーブルの上に上げてモップ掛けをすれば終了です。
ホールの電気を消し、厨房の灯りだけで
二人で分担しながら掃除をしています。
ここまで来ればkさんも早く終わらせたいのでしょう。 黙々と椅子をテーブルに上げていました。
店内は椅子を上げる音とUSENの店舗用BGM(新曲の洋楽)が流れています♪
と、けたたましく店舗の電話が鳴り響きました。
トゥルルルルル…………
トゥルルルルル…………
お店の営業時間も過ぎていたのですが、
出ないわけにはいきません。丁度、電話の近くに居たkさんに、
私 「ごめん kさん電話取って!」
kさん 「mooooo!nandekonnajika....」
kさんは渋々受話器を取ろうとしています。
kさん 「えっ えっえっ…??」
私 「何? 早く取らないと切れちゃうよ」
kさん 「でも店長…」
kさんはなぜか戸惑っている様子です。
トゥルルルルル…………
トゥルルルルル…………
その間も電話は鳴り続け、私は駆け足で電話に近づき、受話器を取ろうとkさんを退かします。
電話の前に来て私は、妙な事に気付きました。ナンバーディスプレイに表示されている番号………。
この店の番号…… でした。
私 「????」
kさんと一瞬顔を合わせるも……。
kさんは困惑した様子でしたが、私は電話に出ない訳にもいかず受話器を取りました。
私 「お お電話ありgとうございます……。」
…………………………。
…………………。
……
ピィーーーーーーーーーーーーー…
私 「うわ〝っ!」
私はその時、受話器を咄嗟に放してしまいました。
ガタン!
受話器が床に落ち、それと同時に店内に今まで軽快に流れていた音楽が消えた。
私とkさんはお互い声を発する事もなく固まるほかなかった。
と、次の瞬間‼︎
店内を覆いつくすほどの大音量のお経が流れてきたのです。
(度一切苦厄舍利子色不異空空不異色色即是空………)
kさん 「 えっ う〝わわえあぁああぁああぁ…」
声にならない声を発し、目には涙を浮かべている。
kさん 「 て て 店長…… 」
私 「 大丈夫、大丈夫だから。」
正直、私自身大丈夫ではありませんでしたが、kさんに言うことで自身も奮い立てようとしていました。(心中は異様過ぎて本当は震えが止まらなかった事を覚えています。)
訳が分からない、さっきまでの談笑は何処へ行った⁉︎ この状況は何だ?
私はこの状況を整理し切れずにいましたが、それでもkさんをなだめつつ、泣き崩れるkさんを連れ、店舗の裏口を出た所にある事務所に行こうとしました。
一刻も早くこの場から逃れたかったのです。
事務所には電話の親機、そしてUSENの本体があり、 まず私はUSENを切ろうと思ったのです。 そして、この大音量で流れているお経を止めようと!!
裏口のドアを開け、店舗から出る。
そして、その隣にある事務所に鍵を開け
入ろうとしました。
「ダメーーーー!!!!」
kさんが急に私に向かって叫んだ!
kさん「てんちょう…… まえ…」
私 「前?」
私たちの目の前にある事務所…
事務所の電気は ついてはいないが…。
見えた。
と言うか見てしまった!
真っ暗な事務所の中。
そのドアのガラス越しにぴったりと張り付きこちらを覗く能面を被った様な女の顔を!!!
私「ぎゃゃーーーーー‼︎‼︎」
kさん「キャァーーーー!」
kさんと全速で走って逃げた。
酸素の吸い方すら忘れる程に走った!
二人共、無我夢中で走り、人通りのある通りに出た所で、私は恐る恐る後ろを振り向いて見ましたが、能面女は追って来ていない様子でした……。
その後はコンビニへ行き、人がいる場所で落ち着こうと、私はkさんに声を掛けました。
コンビニに着いてからは、コーヒーを片手に二人共会話らしき会話はなかったと思います。
kさんは、携帯電話に彼氏さんからの連絡があり車で迎えに来てもらうという事に。
その後、彼氏さんの車に乗りkさんは帰って行きました。
帰り際、kさんが
「店長……。」
「ぎゃゃーーーーw ‼︎‼︎」って 笑笑
私は「いやいやいや全然ですよー」と何が全然なのか分からないがkさんに言っていました。 赤面しまくっていたと思う…。
その数時間後、私はSEC○Mから連絡があり、もう一度、警備の方と店に戻る事になりますが、普段となんら変わらない店内……。
警備の方には、スゴく頭を下げて謝り帰って頂きました。
その後、今現在に至るわけですが、あの時の能面顔の女も見る事はなく、私はというと、そのお店を2年前に辞めて、自身で飲食関係のお店を持つ事となりました。
自営業の厳しさ、辛さを本当に心底感じてはいますが、私はなんとなく大丈夫だろうと思います。
今、私の助手席にはkちゃんが乗っているから。
後日談:
- この話は私の実体験です。 (kちゃん以外誰も信じてくれないけど…。)
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