
長編
暗闇の中で…
匿名 2日前
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思ったところで、何とか体が動いた。
とりあえず、ドアを開けて明かりをつけよう。
そうすれば、別室には家族もいるし気付くはずと思い、ドアに走って行き、あと少しという所まできた。
体も動いたし、もうこれで大丈夫だという僅かな安堵もあったのだろう。ドアノブに手をかけようと手を伸ばしたところ、次の瞬間恐怖の底へと突き落とされた。
「何か」に思い切り背中を引っ張られたのだ。
予想外の出来事に、思わず尻もちをついてしまい、恐怖のあまりしばらく立てなくなっていた。
早くドアを開けないと、そう思っていたところ、向こうからドアが開いて驚いたが、母が立っていたので安心した。
少し涙ぐんでいたので、心配していたのかすぐに状況を尋ねてきたので、「早く明かりをつけようと思ってドアへと急いだ」と話したら、「明かりって、もうとっくに朝になっているじゃないの」と言われ、絶句した。外は薄暗い早朝でもなく、完全に日差しが差し込む朝となっている。
そんなはずはない!
背中を引っ張られたときはまだ辺りは真っ暗だったはず。それから母がドアを開けるまでに体感的にもおよそ1〜2分くらいだ。その僅かな時間に周囲がこんなにも明るくなるはずがないのだ。
それからというもの、この出来事がトラウマになり、しばらくの間は明かりをつけた上で、窓やカーテンを閉めて寝るようになった。いや、そうしなければ寝られなくなってしまったと言った方が正しいか。
暗闇の中で眠るのは、また得体の知れない「何か」に見られているような気がしてならなかったのだ。
この場所やその周辺で、何か事件や事故があった話もなく、それ以降はあの夜のような事は起こらなくなった。自分でもあれは夢だったのでは、と思っていた時期もあったのだが…
いや、あれは夢なんかじゃない。
あの妙な気配、そして何より背中を引っ張られた感触は30年以上経過した今でも、鮮明に記憶している。
自分の背中を引っ張ったのは、確かに人の手だった。
今、この出来事を思い返して気にかかるのは以下のふたつだ。
暗闇の中で、気配を感じた「何か」は一体何だったのかという事と、背中を引っ張られた直後、母がドアを開けてくれなかったら自分はどうなっていただろうという事だ。
おそらく、今後も明確な答えが出る事はないだろう。
でも、それで良いのかもしれない。あの暗闇の中の出来事のように、今後も何度も思い返す事のないような、遠くて、暗い、心の
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- ただの寝ぼけを書かれても読むほうも困る