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ニセモノ
中編

ニセモノ

匿名 2015年4月29日
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私が短大生の頃の話です。 当時、私はパチンコ店でアルバイトをしていました。 その日もバイトをしていた時、午後8時頃、私に電話がきているとバイト先のチーフから呼び出しがありました。何でも電話の相手方は私の母だそうです。 私は、会社の固定電話に直接掛けてきて、自分に用事とは何だろうと思いながら電話に出ました。 すると母は、開口一番私がどこにいるのかと尋ねてきました。 私は不思議に思いながら、「バイト先に掛けてきたんだからそこにいるにきまっているじゃないか。」と応えました。 母は「じゃあバイト先にいるんだね、ならいい。」と言って電話を切ったのです。 私は不審に思いながらも、まだ上がりまで時間がありましたのでホールに戻りました。 帰宅して、私は母に事の顛末を訪ねました。 すると母は、自分が帰宅したのは午後7時30分頃、その時家のリビングに明かりがついているのが見えて、私が家にいるのだと思った。駐車場に車を入れた後、買い物帰りで重い荷物があったため手伝うように何度も私の名前を呼んだ。 しかし、一向に出てこないため、気づいていないのかと思い、リビングと駐車場を繋ぐ裏口に周りドアを何度もノックした。ドアの窓ガラスから明かりは漏れているし、何より部屋の中で私が電話越しに誰かと話しているような声がしたため、わざと無視しているのだと思いまた何度もドアをノックした。 それでも私が出てこないため、入って文句を言ってやろうと玄関に回ってドアノブをまわした。 しかし、ドアには何故か鍵がかかっていた。 私が家にいるのに変だなと思ったが、直ぐに鍵を開けて中に入り、リビングのドアを開けた。 しかし、リビングの電気は消えており私の姿がなかった。 おかしいと思い私の名前を呼びながら家中探したが、私は一向に見つからない。 怖くなった母は取り敢えず私の居場所を知りたかっため心当たりのあるバイト先に電話をした、との事でした。 私は母の話を聞きながら、そんな夢みたいな話があるだろうかと思いましたが、普段冗談を言わない母が真剣な表情でそう話すので私もすっかり混乱してしまいました。 確かに私はその日、携帯電話を忘れて外出しており待ち受けには母からの着信履歴が3件残されていました。 私はもし泥棒が入っていたのでは不味いし、念のため警察に相談してみたらどうかと提案しましたが、部屋を荒らされた形跡も特別盗まれ物もないし、何よりリビングで話をしていた声は間違いなく私の声だったというのです。 私もこれ以上はどうしようもないと思ったので、取り敢えず話を打ち切って自分の部屋に戻りました。 翌日もバイトがあったので、早く眠りたいと思うのですが、母の話が気になって中々寝付くことができず、1時間くらい布団の中でゴロゴロとしていました。 午前1時頃だったと思います。私はふと気になって携帯電話の画面を開きました。そして通話履歴を確認してみようと画面を移動させたとき、私は絶句しました。 通話履歴には確かに母が帰宅した時間頃の履歴が残っていたのです。 電話は登録されていない番号にかけられており、私は怖くなって直ぐに携帯電話の電源を落とし布団にくるまって夜を明かしました。 翌日すぐに携帯を代えたため今となってはあの電話番号は誰のものだったのかはわかりません。 ただ一つ確かなのはあの日あの場所に私を装って電話を掛けた、ニセモノがいたということです。

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