本当にあった怖い話

怖い話の投稿サイト。自由に投稿やコメントができます。

長編

緑の文化大革命

しもやん 2日前
怖い 330
怖くない 360
chat_bubble 0
15,771 views
二次というわけだ。科学を飯の種にしている学者がいい加減な論文を書くはずがないという先入観と、自分でことの次第を確認するのは面倒だという経済的事情。  二次的な引用に問題があると言っているわけではもちろんない。精緻な理論や論文はむしろ、引用回数がステータスになるほどである。問題はそうでない論文――すなわちずさんな実験や観察によって書かれた、著者の思い込みのようなしろものが厳然と存在するという点である。  情報革命以前ならそれも対した問題ではなかった。科学論文やそれらを噛み砕いたメディアの発信は受け取り手も限られており、われわれ消費者のなかでも興味のある向きしか汚染されなかったからだ。ひるがえって現代、情報は全世界的なデータベースであるネットに集積されており、われわれは数語を入力するだけでそれらに触れることができる。その際に得られる情報が誤った一次情報からの親引き、孫引き、曾孫引きにあふれているのは容易に想像がつく。ネットは計り知れないほどの情報の宝庫であると同時に、大量のジャンクを溜め込んだ空前のごみ溜めでもあるのだ。      *     *     *  先ほど触れた〈動物は同じ種同士では互いに殺し合わない〉という見解をどう考えるか。  まず断っておくと、これはまったくの誤りである。確かにオオカミやヘラジカなどの動物は、オス同士が闘争を始めても血みどろの殺し合いにまで発展するケースはまれだ。劣勢のオオカミは形勢不利と見るや、腹を上にして転がって恭順の意を表明する。優位なほうはもうそれ以上攻撃を加えようとはせず、めでたく停戦が成立する。  いっぽうアシカのオス同士の闘争はしばしば熾烈を極める。  優勢劣勢にかかわらず個体同士は死力を尽くして戦い抜き、負けた個体は瀕死の重傷を負う。勝利した個体ですら無事ではすまないケースが多い。歴戦の勝者はたいてい古傷を大量に引きずったぼろぼろの死に体である。  彼らはどうやって闘争のルールを決めているのだろうか。オオカミは種内であらかじめ厳格な掟を定めているのだろうか。オオカミの警視総監のような役回りの個体(および警察官に相当する群れ)が存在し、彼らが「汝、殺すなかれ」という法律を制定しているのだろうか。いっぽうアシカは無政府主義者の集団で、どんなケンカもやりたい放題、個体は好き勝手に生きられるのだろうか。  むろんそうではない。単に自然は無駄を嫌うのである。  

この怖い話はどうでしたか?

f X LINE

chat_bubble コメント(0件)

コメントはまだありません。

0/500

お客様の端末情報

IP:::ffff:172.30.2.48

端末:Mozilla/5.0 AppleWebKit/537.36 (KHTML, like Gecko; compatible; ClaudeBot/1.0; +claudebot@anthropic.com)

※ 不適切な投稿の抑止・対応のために記録される場合があります。

grid_3x3 話題のキーワード

search

サクッと読める短編の怖い話 サクッと読める短編の怖い話

読み込み中...