
長編
時計まわり
匿名 4日前
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た。
その時になって初めて気がついた。
しゃり、しゃり、
しゃり、しゃり……。
立ち止まった俺の斜め後ろで、
妙な音がしている。
動物が草を踏み分ける音でもなければ、何かを削る音でもない。
アルミホイルを擦り合わせる音が一番近いか。
薄い金属片が触れ合う音に似ていた。
左手の茂みの中から。
しゃり、しゃり、しゃりり、
しゃ、しゃ、しゃ、しゃ。
音が速く、近くなる。
それと同時に、頭がくん!
と引かれて喉が詰まる感じがした。
ささささささささ…。
音。
それに引かれて首が左へ向こうとする。
見てはいけない、
音の正体を知りたくない、
突然そんな感覚に襲われ、
なのに、頭の中では分かっているのに、顔がそちらを向こうとする。
音がすぐ側まで来ている!
顔は真横を向く。
俺は目を瞑った。
「…何やってんだ?」
従弟の声だった。
喉が詰まる感じがなくなり、
首が自然に元に戻った。
目を開けると、石段の踊り場に当たる部分にヤツがいた。
949: 時計まわり4/4 ◆BxZntdZHxQ [sage] ::2008/04/29(火) 21:39:04 ID:6CNjdJyS0
ヤツは銜えた煙草をペコペコ上下させながら、デジカメをいじっていた。
「境内禁煙だろ。」
「だからまだ火はつけてませんよーだ。」
少しホッとしながら、
耳はまだ音の行方を探っていた。
少しずつ離れて行く様だ。
「あれ、何の音かなぁ。
シャリシャリ言ってるの。」
俺に言われて従弟は暫く耳を澄ませていたが、
「下の道路で何かやってる音じゃないの?電線の工事してたよ。」
そう言って、さして興味もなさそうに先に下りて行ってしまった。
俺もヤツの後をついて行くと、
鳥居の正面の商店がシャッターを下ろす処だった。
勿論シャッターの音はシャリシャリとは言っていない。
従弟は鳥居を潜るとすぐに煙草に火をつけ、不意に俺に煙を吹き掛けた。
俺が怒ると、狐にでも化かされたんじゃないかと思って、などとぬかした。
そんな事一切信じていない癖に、
明らかにからかっている。
「一番奥にあった雛壇気にしてたみたいだけど、あれ、人形供養をする場所だってさ。」
来た道を土産物店の並ぶ通りへ
戻りながら、従弟は半笑いでそう
言った。
「あそこの人に写真いいかって聞いたら、奥の
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