
中編
踏切
匿名 2019年7月29日
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聞いた話なので、どこまで真実か分かりませんが、一応聞いたままに書きます。
私が高校時代に住んでいたところの近くに、曰く付きの踏切が有りました、どんな曰くかと言うと。
その昔、特急列車と観光バスがその踏切で衝突する事故があり、運転手さんとガイドさんが絶命したと。当時は全国ニュースでも取り上げられるほどの大きなニュースで、その後、事故現場には夜な夜な亡くなられたお二方の幽霊が出ると、、、。
その踏切は、可笑しな作りになってて、線路に対して斜めに入ってきた道路が、線路の直前5メートルぐらいのところで急に角度を変えて線路に垂直になり、反対方向でまた同じ様な作りになると言う、言わば、『平行四辺形の踏切を作りたくなかったので、直前で道路の角度を変えましたよ』的な、道路設計者の怠慢と言わざるを得ない踏切で、衝突事故は起きるべくして起きたと言っても過言ではない踏切でした。
当然、そんな変形路線なので、運転が下手くそな人はそこで立ち往生ですし、バスやトラックなどの大型車が通行する際は、対向車が踏切の手前で停止して、大型車を行き過ごさせなくてはならないという、地元では評判が悪い踏切でした。
不思議な話は、この踏切にまつわる話です。
私にこの話をして下さった方(以降:Aさんとします)が、ある日この踏切に差し掛かると大渋滞していたそうです。
原因は、トラックが踏切を通過しようとした際に、馬鹿対向車が踏切直前まで接近してきていて、トラックの頭を振れない状態に、且つ、後続車も接近したためトラックがバックする事も出来なかったそうです。
踏切の緊急停止信号は既に押されていたらしく、遥遠くには電車が止まっていたそうです。
『うわ、通れない』
Aさんがそう思った時、前から白いワイシャツの中年のおじさんがやって来て、『今から後続車を一台ずつバックさせるから手伝って欲しい』と告げられ手伝う事に。
数十台の車をバックさせて、なんとかトラックが通れるスペースを確保し、トラックを通し事無きを得たそうです。
トラックが通過して、車の誘導に携わった全員が一堂に会して解散をする際、道路の反対側で誘導にあたっていた人と顔を合わせたそうですが、そこに例のバス事故で犠牲になられた会社のバスガイドさんが居られたそうです。
「また、凄惨な事故が起きる前に未然に防げて良かった」
その場に居合わせた誰もが同じ様な事を口にしていたそうです。
電車の運転手がやってきて(既に近くに居たのかも?)、踏切上の障害が解除された事を知るなり、何処かに通信したのか遮断機が降り警報器が鳴り始めたそうです。(普通は順番逆ですが、何かあった時はそうなるのでは?との話者の見解でした)
電車が通過して遮断機が上がる頃には、各々車に戻り、発進できる様に準備していたそうです。
Aさんが踏切を通過する際、最初に会ったワイシャツの中年男性とバスガイドさんは、踏切の近くの草むらに立ち、和かに手を振って見送って下さったそうです。
そこで、Aさんはふと疑問に思ったそうです。
そこの踏切って、田んぼのど真ん中みたいな場所なので、近くに民家も無ければ、当然にしてバス会社もあるわけでは無く、どうやってそのYシャツのおじさんとバスガイドさんは踏切まで来たのか?
車で移動中だったのであれば、自車を放置してわざわざ見送るだろうか?
何よりも、Aさんが1番気になっていた事が、見送ってくれたバスガイドさんの制服は、数年前にモデルチェンジしてて、その出来事が有った当時は、社員でその制服を着る者は誰も居なかったであろうとの事、そして最初に会ったおじさんがワイシャツに付けてた襟章がそのバス会社の社章だったとの事でした。
この話の他にも、踏切で立ち往生していた車を事故で亡くなった運転手さんとバスガイドさんの幽霊が誘導して、踏切外に車を出したなどの似たような話も有りました。
因みに、その踏切は今では跨線橋になり、悲劇が繰り返される心配は無くなりました。
かつて、踏切が有った場所の近くには慰霊碑が建てられ、鎮魂の詩が刻まれています。
亡くなられたお二人は、どんな気持ちで未来のこの場所を見ておられるのでしょう?
そんな事を考えると、目頭が熱くなります。
この怖い話はどうでしたか?
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