
長編
ロリコン幽霊VSお姉ちゃん
けいすけ 2020年7月11日
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これは私が小学五年生の夏休みに体験したお話です。
その日は七夕祭りへ母と二人の弟と四人で出掛けました。
祖父母と父と母に貰ったお小遣いが入った財布を握りしめ屋台を見て回り、大型商業施設(会社名は変わりましたが現在も営業中の為、ぼかしました。)でお昼ご飯を食べてお化け屋敷に行きました。
弟達と母は入らず1人意気揚々と入る私。
勝ち気で男勝りの私はお化け屋敷何て所詮は子供騙し。
機械仕掛けのからくりと人間が作る世界…。
そう思い私は余裕をこいていました。
そんな傍らでお化け屋敷を怖がり泣いている小さな男の子と宥めるお母さん。
「大丈夫、お姉さんがお化け何かやっつけてくるから。安心してね。」
「威勢だけは頼もしいわね。お化け役の人蹴倒しちゃ駄目よ。」
母と私の会話で笑顔を取り戻した男の子とお母さんと弟達に見送られながら私はお化け屋敷に入った。
…うん。
正直言って恐くなかった。
機械仕掛けを見ては鼻で笑うくらいの可愛いげのなさ。
井戸から出て来た幽霊役のお姉さんを逆に脅かしにかかるくらいのレベル。
「可愛い顔して強いのね。」
呆れ笑いの幽霊役のお姉さん。
「入口で男の子が泣いていたから。」
お姉さんは優しい笑顔で笑ってくれた後に、出口の方で機材トラブルで電気がつかなくて暗いから気をつけてねと言われ見送られる私。
…恐怖は出口で起きました。
暗い通路を抜けて外に出る瞬間、横の暗い空間から白い着物を着て生気がなく紫と青白い色合いが混ざった顔色の男性が叫びながら私に飛び掛かりました。
後ろから抱きつかれて羽交い締めにされた挙げ句に胸を揉まれる私は…恐怖で動けなかった。
だって…男性に体温が無くて亡くなった人の身体と同じ冷たさだったから。
横にあった鏡のようなものは暗闇をうつすだけ。
「お兄さんと一緒だから怖くないよ。可愛いお嬢ちゃんだね。欲しいな。」
その時でした。
鏡のような空間の入口が突然、明るく光ると目の前に1人の女性がいました。
年は二十歳前後の若い女性で、髪の毛が長くて何処か姉と母にそっくりでした。
幼い頃から時折現れては助けてくれた女性…。
「…私の妹に何をするの…?怖がらせた挙げ句に手を出したわね。許さないわ。まだ小学五年生の妹によくも…。」
姉は怒りの形相で男性の首筋に怒りが籠る両手に爪を立て思いっきり掴みあげる。
「怖かったね。もう大丈夫だよ。さ、涙を拭いて。弟達に笑われちゃうよ。」
明るい出口の方へ、作業着姿の男性に手を引かれて出ました。
一瞬しか見えなかったけど、頭は丸坊主で四十代くらいの男性でした。
キリッとした目元が印象的な男性。
「さ、お母さん達の所にいきなさい。」
優しく頭を撫でられ泣きべそをかいた顔で母と弟の元へ。
泣き顔をからかう弟達とは違う顔色の母。
事の顛末を語ると一瞬怒りの形相を目に浮かべた母はチラリと出口を睨み付けたが、直ぐに優しい笑顔になった。
つられて出口に目を向けると、さっきの男性と女性が優しく微笑み消えた。
「さ、1人で頑張ったご褒美にお菓子買ってあげるわ。」
母の一言でテンションが上がる私達姉弟。
お化け屋敷事件で祖父母と父に笑われたが、男性の体温が冷たかった事を話すと父と祖父母は凍りついた顔をした。
その理由はそれから四年後に亡くなった祖父の身体が教えてくれた。
お化け屋敷事件の晩に夢を見た。
助けてくれた男性に似た顔立ちの男性達と助けてくれた女性と母とそっくりの女性達は怒りの形相で手に棒やら刀やら竹刀やら長い刀がついた鉄砲を持つ兵隊さんの集団に囲まれてボロボロ姿の男性がいた。
「まだ小学五年生の曾孫に手を出しましたね…。許しませんよ。」
叔父とそっくりの男性は冷たい表情をして怒りを顕にしていた。
ボロボロの男性は怒りの形相の集団に連行されていった。
「もう大丈夫だよ。怖かったね。」
その声を聞いた私は目を覚ますと枕元に座る優しい笑顔を浮かべた着物姿の女性を見た。
若い頃の母に少し似ていた。
夏休みが終わり、お化け屋敷最終日の日に偶々通院した帰りにお化け屋敷に母と行くと出来事の話をスタッフさんにした。
出口は真っ直ぐ伸びた壁伝いだったから空間何て無かった事、ましてや鏡何て置いてなかった事と出口にお化け役の男性何て存在していなかった事を聞いた。
「お化け屋敷はたまに本物が入るのかもね。」
「あんまり可愛いお嬢ちゃんだから変態さんの幽霊が来ちゃったのかな。」
スタッフさんの言葉を聞いた母は私の頭を撫でながら言った。
「お盆にちゃんとばあちゃん家でお仏壇にお線香とお菓子を子供の頃からあげてるもんね。だから助けに来てくれたんだね。」
…お化け屋敷事件があった後のお盆に母方祖母の家へ泊まりに行き、仏間の遺影を見て驚いた。
助けてくれた男性の写真が真ん中に飾られていた。
他の遺影も夢の中に出てきた顔触れ。
…遺影の中の方々に手を合わせた。
母方祖父と曽祖父母と高祖父母は優しく微笑みかけてくれた。
後日談:
- シゲキックスを御供えした晩に夢の中でシゲキックスの酸っぱさに各々面白い反応をくれた祖父母軍団をみて笑う小学五年生の私と叔父と祖母でした。 「昔のお年寄りにはきついと思うわよ。」 「シゲキックスは美味いよな。」
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