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長編

魔法の言葉

匿名 2021年12月9日
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怖くない 103
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あれは私がまだ美容師をしていた時に起きた事件でした。 私、宮野 美沙 は今野 綾乃 という同期の女の子がいた。 いろいろ考えすぎてしまう私とは対照的になんでも前向きに考えられるような素敵な子だった。 二人ともアシスタントで辛い毎日だったがお互いがお互いを励まし合い何とか3年目を迎えようとしていた。 そして私達には目標があった (  絶対 お金持ちになろう  ) まじないの様に二人でそう言い合っていた 若かった私達は決意の印としてNever say never. と私は太ももに、綾乃は首の後ろにタトゥーを彫った いつもその場で行動する私たちは彫師の店に行くまでなにを入れるか決定していなかったが、綾乃がその英語のフレーズを入れたいと言ってきたのだ 「決して諦めるなって意味なんだって!私たちにピッタリじゃない?」 と笑って綾乃が言ってきたことを今でも忘れない 綾乃は肌には他にもタトゥーが入っていたが私はそこで初めてタトゥーを入れたのでドキドキと痛みで胸いっぱいだったのを覚えている そんなことをしながら二人で仕事終わり飲みに行ったり、夜の仕事をしてみたりもした 美容師の仕事をしながらの副業はハードだったが二人の夢を思えば苦しいことなんか何もなかった 勿論次の日の仕事が眠いのは言うまでもないが(笑) そんな日常が続いたある日、綾乃は夜の仕事に行く前に私に照れながら言った 「私ね。久々に彼氏が出来たんだよね!もうね、めちゃめちゃお金持ちの人なの!月300万は稼いでる社長さんなの!」 「え!どこで出会ったの!?」 「SNS!共通の趣味が多くてね、ちょっと変わった人だけどお金持ちは魅力!!」 綾乃ったら・・・。 私よりも強くお金に執着を見せるようになった綾乃はお金持ちの彼氏を捕まえたことに幸せいっぱいの様だ。 よかったね!最初は綾乃の幸せを一緒に喜んだ。 けど一週間後 徐々に綾乃の様子がおかしくなってきたのだ わずか1週間しかたっていないのに随分げっそりとしている 「綾乃?大丈夫?彼氏となんかあったの?」 「彼がね!もっともっと痩せて可愛くなれば車もブランドの服も鞄も何でも買ってくれるの!・・・それにデブな女は嫌いだからって怒られて叩くから、痩せないと・・・」 息をのんだ 元々夜関連の会社を取り締まっている社長とは聞いていたがこれは本格的にまずい。危険だ。 そんな彼氏やめた方がいい!逃げないと綾乃が死んじゃう! そう訴えたが綾乃には一ミリも届くことはなかった 「これからデートだから、痩せてほめてもらうの!」 そう笑って言う綾乃 私の中の警報が鳴った 「本当にそいつやばいよ!何かあってからじゃ遅いよ!ね?やめよう!?」 必死にお願いするが綾乃は困った顔をした後、苦笑して言った 「大丈夫!なんかあったら逃げるから!それに、Never say never.。私達諦めないで成功を掴むんでしょ?大丈夫だよ!じゃあ!これから彼が迎えに来るから!」 綾乃を見たのはそれが最後だった 仕事に来なくなり連絡も取れなくなって消息を絶った 夜の仕事の伝手を辿って都内まで探したが見つからなかった 警察も動いてはくれず自力で探すしかなかった。当時の私は探偵を雇うほどの財力もなかったから。 皆は口を揃えてきっと大丈夫!と笑って言っていた。 身近な人がどうにかなる。なんて思いもしなかったんだと思う ある晩、私が仕事から帰っていると携帯が鳴った 名前を見ると綾乃 と表記されている 「っ!!綾乃!?あんたどこにいるの!?」 私は勢いよく電話に出たが相手側からは何も聞こえない 少しの沈黙が続いた 「ねぇ、綾乃!?綾乃なんだよね!?」 「‥‥み・・・・さ…」 今にも消えてしまいそうな声で私の名前が呼ばれた 耳を澄ませていないと聞こえないくらいの小さな声だ 「…ぁあ゛…あぁ  ぁ。  み   さ」 「…綾乃???」 「あああああああああああああああああああああああ    ガチャン    ツー  ツー 電話が切れた それと同時に涙が零れた ものすごく苦しそうな声だった きっと綾乃は辛くて苦しい思いをしている なのに私は何もすることが出来ない 再度警察に相談してみるも綾乃が成人を迎えていること。恋人に会いに行くと言って消息を絶ったこと。 事件性がないとみられ取り合ってもらえなかった どうすればわからない 無力でごめん。 綾乃の携帯に再びかけるが無機質な声で電波の届かない~が流れるだけだった そして翌日、綾乃の両親から遺体で発見されたとの知らせが入った 薬を過剰摂取して亡くなったらしい 目の前には眠ったような姿で横たわる彼女 最後見た時よりさらに痩せている 腕には私たちの誓いの印Never say neverが虚しくそこにいた 警察は自殺、そう断定した けど私は警察の判断を信じることはできなかった だってあんなに二人で夢を語っていたのに。綾乃が自殺?そんなのあり得るわけないじゃないか あいつだ。きっとあの男が。 お葬式すら来なかったあの男の仕業に違いない。 けど証拠も出ないまま綾乃は火葬された。 どうやら彼氏が泣きながら可哀そうだから早く火葬してあげたいと言ったらしい あいつのせいに違いない、けど、 お金持ちになる!と言い始めたのは私だった 私があんなことを言わなかったら綾乃は死ななかったかもしれない。 私にもっと力があったら綾乃を助けられたかもしれない。 あのとき、最後の時、手を離さなかったら今もここにいたかもしれない きっと狭くて苦しい中綾乃は助けを呼んでいた おかしくなっていく自分に恐怖しながら泣いていた ごめんなさい。  綾乃。 救えなくて 本当にごめん 。 私は永遠の眠りにつく綾乃の傍らで静かに涙をこぼした そしてあの事件から2年が立っていた 結局美容師はやめてしまい今はOLとして会社に勤めている そして私は彼氏が出来き、初めての同棲をしているのだ 彼氏こと西野 佑太 は不器用だけど優しくてとてもいい人である 同い年ということもあり変に気を遣うこともなく毎日楽しく充実した日々を過ごしていた 「ただいま~」 「ん?ああ、お帰り。どこ行ってたの?」 携帯をいじりながら聞いてくる佑太 確かに土日の休みに一人で出かけることもだいぶ少なくなったもんだ 「海に行ってた!少し早いけどこれから夕飯作るから待っててね~」 私は買い物袋から食材を取り出してパパっとパスタを作っていく 私と彼の好物であるペペロンチーノはいつの間にか得意料理の一つとなっていた 料理をしていると   カリカリカリ    カリカリカリ 皮膚を搔きむしるような音がする また、だ 佑太との同棲に幸せを感じていた私だが唯一悩みがあった それが最近起きる不可解な現象である 最初は夜だけだったが今は昼でもたまに聞こえる皮膚を掻くような音 部屋全体に響いてる感じがしてどこから聞こえるかは特定できなかった そしてもう1つ。 イラストを描いているときに視線を感じ廊下を見ると誰かの影がよぎる 佑太かと思い寝室に行くも彼は寝息を立てて寝ている。 人に反応してつく自動の電気が独りでにつきだす 幽霊を信じていない私でも最近急増するそういった怪奇現象に不安感を覚える 「なに、見てんの?」 先ほどまで携帯ゲームに夢中だった佑太が不安そうな顔で私を見ている 「ん~なんかぼーっとしてた(笑)」 「おまっ!料理中にぼーとは危ないなおい!」 「だね(笑)気を付けます(笑)」 ホラー映画などを見る私とは対照的に彼は心霊系の話がとても苦手なのだ 映画などストーリーの中ですら怖いのにそれが身近で起きてるなんて知ったら悶絶するに違いない しかもこの音はきっと私しか聞こえていないんだろう 前に一度、変な音がしないかと聞いたが彼には何も聞こえていなかった むしろ、怖いこと言うなよ!と怒られたくらいである 夕食を済ませた後に私は家事を終え彼と映画を見ていると急に眠気に襲われた 時計を見ると時刻は0時を回っていた 「ごめん佑太。私眠くなってきちゃった。ベッド行くね」 「寝ておいで。俺はちょっと残ってる仕事があるからそれを終わらせてから寝るわ。映画の続きは明日みような」 頭を軽く撫でられ私は寝室へと移動しベットに入る だんだん眠りに落ちていく  が カリカリカリカリカリカリカリカリカリカリ またあの音 私は布団を被り音を遮断しようとするが部屋全体から聞こえてくる為、なんの効果もなかった カリカリカリカリカリカリカリカリカリ そのあと五分間くらい音が鳴りやまなかった  が 急にピタッと音が病んだ 私は恐る恐る布団からかをを出して周りに誰もいないのを確認する 胸を撫でおろし再び目を瞑る瞬間 ザッ 急に体がベットの足元方面に引っ張られていくような感じがした 足を掴まれたなどではなく単純に体がそのまま下にずり落ちた感覚に近い 「な、に!?」 こ、こわい ベッドから飛び出して彼のいる部屋に行こうと思ったが体が動かなくなった 金縛り、は何度も体験しているが今回はいつもとなんだか違った いつもは最初から意識がはっきりしている状態で金縛りになることなんかなかったが、今回は意識がはっきりとしている中で急に体が動かなくなった 今の私に動かせることが出来るのは目線だけだった カリカリカリカリカリカリカリカリカリカリ 皮膚を掻く音。けどいつもとは違うのは部屋中から響いているわけではなかった。 音がする方に視線を向けるとウォークインクローゼットがそこにはある ギギギ   ギギギ 不自然に、ゆっくり クローゼットのドアが開いていく 部屋が暗いためクローゼットの中もさらに暗く、ほとんど見えないが誰かそこにいることは分かった 目がだんだんその暗さに慣れてきて少しだけ確認することが出来た 男だ 年齢はわからない。その皮膚は火傷のケロイドで覆われていて、もはや皮膚と見受けられる部分などないに等しかった ゆっくりこちらに近づいてくる ぎこちなく 細い脚で ペタリペタリと 声がでず、助けて。と、そう願うしかできなかった 男はついに私の横までやってきた 喉の奥がヒューヒューとなるのが分かる 私は死ぬのだろうか。死にたく、ない 涙が流れる 男が私の髪に触れる 初めての感覚でなんて言えばいいのかわからない ただきっとこの感覚に名前を付けるとしたら  孤独感 どんどんその男に何か大切なものを奪われて行っている感覚 それが命なのかはわからない 目を瞑る 何も分からない  真っ暗闇に落ちていく 息苦しく すごい圧を感じる ぺちゃんこになりそう・・・ 私は瞳を閉じた 真っ暗闇の中 誰かが私を呼ぶ 美沙  美沙 美沙 一体誰だろう 温かく光る何かが私の元にやってきて囁いた   「          」 私が目を開くと同時に部屋の扉が開いた 「美沙!!!!!」 「佑太っ」 私はベットから飛び降り部屋に入ってきた彼と抱き合う 泣きじゃくり言葉が出ない 「ッ~おと、こがっ!いて」 私は部屋を振り返るがそこには何もなくクローゼットは何もなかったようにしまっていた 「本当にッ本当にいたの!」 「美沙っ」 「嘘じゃないよッ!?本当にッ」 「美沙ッ!!!!」 震える私を抱きしめながら彼が私の名前を強く読んだ 「大丈夫。信じてるから。怖かったよね。早く気づけなくてごめんな」 彼の温もりで落ち着きを取り戻し二人でリビングのソファーに腰掛ける 佑太が淹れてくれたココアが体にしみる そこから佑太がぽつりぽつりと話してくれた 「俺もさ、仕事しながらうとうとしてたんだ。それでいつのまにか寝てた。そしたら夢を見たんだ。部屋はこの部屋なのになんだか別の世界みたいな感覚がした」 まるっきり景色も同じなのに冷たくどこか不安感を煽るようなそんな夢 「その中で女の人が出てきたんだ。多分俺らと同じ年くらいの子。その子はずっと洗面所の床を指さしてた。助けて。ずっとそう叫んでたんだ。」 叫んでいた。表現が少し違うかもしれない。 その子の言葉が頭に直接入ってくる感覚 美沙が危ないって。あの子を守ってって。 「俺はそこで目が覚めて急いで美沙のいる部屋に入ろうとしたけど鍵がかかったみたいに部屋に入れなかった」 あそこの部屋に鍵なんかついてないのにな。と彼は苦笑した 「そこから彼女が指さしてた床下点検口を開いてみたんだ。そしたら、髪が入ってたんだ。多分無数の女の人の髪の毛だ。束になってはいってた。 俺は気味悪くなってそれを捨てようとリビングに戻ったら、だしてもないのにライターが机の上にでてたんだ。あと紫の花も。」 髪の毛を燃やすと黒い煙がでた それが燃え切ると私がいる部屋の方から音がしたとか。 案の定扉は開くようになっていて今に至るというわけだ 「ありがとう、佑太」 「いや、俺じゃない。その女の人だよ。美沙を助けたのは。一体誰だったんだろう。そういえばピンクの花を手に持ってたな…」 ピンクの花。・・・そうか。やっぱり 「ううん。それはもう誰か、わかってるから。」 彼は頭の上に?を浮かべていている 私はライターにとともに置いてあったという花を手に取った 「菖蒲」 そう、あの時、あの男にのまれそうになった時確かに声が聞こえた。 それは私がよく知っている魔法の言葉 「Never say never・・・」 「なんだそれ?」 「魔法の言葉(笑)」 翌日私たちは霊媒師さんを呼んだところ過去に女の人を殺してその髪を集めていたという男が此処に住んでいたらしい どうやら事故で全身火傷をして死んだが髪の束とともに怨念が残っていたんじゃないかということ。 そして彼が止めに来なかったら私も向こう側に連れていかれていたと言われた あんなことがあったので私達は新しい物件を探してそのアパートから離れた そしてあの日から1年後 「ねぇ佑太。お花屋さん行こう?」 前にアパートに近かったお花屋さんに顔をだす 「こんにちは」 「あら!あなた!いつもディアスキアを用意してたけど今日はペチュニアでいいのね?」 いつも対応してくれるおばさんが笑って出てきてくれる その手には黄色い花が持たれていた 「はい!間違いないです。有難うございます。」 私は黄色く綺麗に咲くペチュニアを受け取り海へと向かった 防波堤の先に行き花を海に投げ二人で手を合わせた どうか生まれ変わったら、今度こそは幸せになれますように。 何度も願った  「綾乃にはお墓がないから命日になったら綾乃が大好きだった海に来てお花を流してたの。」 「ちゃんと、届いてたんだな」 「うん。助けてくれて、ありがとう。綾乃。助けられなくて、ごめんね」 佑太が私の涙を拭った 「私、ちゃんと夢叶えるよ。綾乃の分まで。頑張るから」 私にはお守りが二つもあるんだ 一つは魔法の言葉 もう一つは菖蒲の花びらを押し花にして作ったしおり こんなに心強いものはない 「Never say never…」 私は絶対諦めないよ。あなたが信じてくれている限り。絶対。

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