
長編
動く人形
匿名 2016年8月22日
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小学生頃の話です
家には両親と姉が2人いたのですがその頃はまだ小さいということもあり、次女と2人、共同で部屋を使っていました(私は男です)
2人の私物が部屋に置かれており、その私物とは別に、1つだけ両親の知人からの送り物としてオルゴール仕掛けのフランス人形がタンスの棚の上に置いてありました
そのフランス人形はとても高価な物らしく、いくらした物かを尋ねても値段は教えてもらえませんでした、家にいつから置いているものかを聞いたことはなく作られてからどれくらいたったものかも不明です
ネジを回さなくてもオルゴールが昼間や夜中に、急に鳴り出したていた事を考えると結構な年数が経っていたように思えます
当時はフランス人形の精巧さからオルゴールが動いているのは、もしかしたら生きているんじゃないかと思い、姉と2人で「気持ち悪いね...」と言っていました
(勿論姉は生きているかも?とは思っていなかったようですけど)
最初は
「気持ち悪い」
「気味が悪い」
「もしかしたら...」
と言っていても、段々と慣れてくるもので愛着すら湧いてきていました
男なのに
「行ってきます」
「ただいま」
と話し掛けていたり
(後で聞いた話では姉も話し掛ける事が何回かあったそうです)
フランス人形に愛着も湧き、慣れてきた頃のことです
オルゴールが急に動き出すのはいつものことなので(フランス人形はオルゴール仕掛けで腕も動くような物でした)最初は気にもとめていなかったのですが、朝、目が覚めてフランス人形を見ると腕の位置や身体の向きが変わっていたり、昼間でもオルゴールが鳴っていないのに朝に目が覚めた時と同様に腕や身体の向きが変わっていることがあったのです...
日にちがたつにつれ、朝目が覚めると段々と自分のベットの方へ
昼間なら、段々と自分がいる方へと身体の向きがちょっとずつ変化していくように...
段々と怖くなり、話し掛ける事も少なくなっていきました
そんな事が続いていた、ある夜の事です
トイレで目が覚める事は多くありましたが、喉が乾いて目が覚めたり、お腹が空いて目が覚めたりということはあれど、その時はこれといって何も理由が無いのに目が覚めました
(後にも先にも何もないのに目が覚めたのはそれっきりです)
なんとも言えない不思議な感覚で目が覚め、また、妙に目が冴えていました
二段ベッドの下では姉が寝息を立てています(私は上です)
ふと壁掛け時計に目を向けると2時00分...
丑三つ時という時間に目が覚めたことに少し気持ち悪さを感じるのと同時に
【ゴトッ】
という物音がしました
目を向けるとフランス人形が棚の上から床に仰向け状態で落ちていました
朝、目が覚めると床に人形が落ちていることはあったのでその事を考えると違和感はないのですが、丑三つ時という時間から少し怖くなり、気を紛らわすのもあって何気なく外に視線を移し、時間にして約五分程星空を眺めていたと思います
そしてふたたび人形に視線を戻すと
天井に向いていたはずの人形の顔が床に向いていたのです...
勿論腕も...
「えっ!?」
”いや、仰向けだったのは見間違いだったかもしれない”
と思い、気の所為だとして、再び眠りにつこうとしたのですが人形から目線は外せず、外しておかなかったが為に見てしまったのです
少しずつ人形が起き上がってきたのを...
この時点で私は”なんで!?” ”どうして!?”と軽くパニックになっていました
その時、いつから鳴っていたのか分からないオルゴールの音色が聞こえて来ました
普通ならそこで
”オルゴールが動いたからだ!”(オルゴール仕掛けにより腕も動く)
となるのですが、そうはなりませんでした
なぜなら人形は起き上がり続け
完全に立ち上がったからです...
私の心臓は本当に飛び出るんじゃないかと言うほど高鳴り、人形から目をそらせなくなりました
立ち上がった人形は私に背を向けていましたが、オルゴールの音色に合わせ、徐々に身体の向きを変えていき、私がいる方へと...
怖くて、怖くて、布団を頭から被り団子虫のように丸まりながら(人形から目を離したら恐ろしいことになりそうで)布団の隙間を少しだけあけて人形を見続けました
人形は完全に私の方へは向かず、私に対して90度ぐらいの状態(人形の左側が見える)
で回るのを止めました
そこで完全に止まってくれればどんなに救われたか
残念ながらオルゴールは鳴り続けており、まだ終わらないことが理解できました...
人形は両手を前後に動かし、本来なら動くはずもない両足もスカートの中で動かしているようでした
そして
フフフ...
という笑い声が聞こえて来たのです
笑い声を上げながら私がいるベットのはしごへ向けて歩き出しました
笑い声をあげた事より
”こっちに来てる!?なんで!?”
”こっちに気付いたらヤバイ!!”
と私に近づいて来ていることに対しての恐怖の方が大きく、人形に自分の存在を悟らせまいとして、口を両手で抑え、呼吸音が聞こえないようにし、出来るだけゆっくり空気を吸ったり吐いたりしていました
人形は私の居場所を知ってか、しらずか、笑い声を上げながらはしごの真下へとゆっくり近づいてきます
フフ...フフフ...フフフフフフフフ
”このまままだと...”
そう思った時です
タンスとベットの丁度中間付近でオルゴールの音がゆっくりと止まって行き、同時に人形の動きもゆっくりと止まっていきました
”終わった!!”
そう思い、口を押さえていたのをやめ、手を離した際に、その手をベット柵にぶつけてしまいました
”ガンッ”
と物音を立て、その瞬間に
人形がこちらに
【ぐるん】
と向きを変えたのです
止まっていたオルゴールもまた鳴り出し、その音色は気の狂ったようにめちゃくちゃなテンポでした
”みつけた...みつけた...みつけた...”
そう言いながら私の方へ
”殺される”
そう思いました、ボロボロと涙を流して泣き声を上げ、今度は布団を隙間なく完全に被り、両手で頭を抱え...
人形は、はしごの真下へ辿り着くと
ケケケ...フフ...ケケケケケケフフフフケケケ
と声をあげていました
狂ったオルゴールの音色と共に
ギシッ...ギシッ...ギシッ...
はしごを登ってきます
ギシッ...ギシッ..ギシッ.ギシッギシッギシッギシッギシッ
人形は完全にはしごを登り終え、私の頭付近に近づき、遂には頭に人形の重みと思われる重みを感じだしました
いる...いる...いる...いるいるいるいるケケケケケケケケケケ
フランス人形の狂った声を聞き
”もうダメだ!!!!”
そう思った時です
「うう〜ん...」
と完全にその存在を忘れていた姉が唸りながら寝返りをうちました、それと同時に
ちっ!
と人形が舌打ちしました
なぜだか理由は分かりませんでしたが、人形の重みが消えていき、笑い声が段々と離れていきました
(後で知ったことなんですが、姉には守護霊としておばあちゃんがついているらしく、そのおばあちゃんがとても徳の高い方だということが分かりました、なので、あの時に姉が声を上げ、守護霊としついているおばあちゃんのおかげ?で人形は私を襲えなかったのかも知れません)
少しずつオルゴールの音色も普通に戻っていきました
人形がはしごを完全に降り終わり、音が離れた位置で聞こえだしたところで、少しだけ布団の隙間を開けました
人形はそれを待っていたのでしょう...
私は隙間を開けたことをすぐに後悔しました
人形は私の方を見ており
【ステナイデネ】
そう言葉を放ちました
喋り終えた後はすぐに背を向け、タンスの棚の方へと人形は戻っていきました
”終わったんだな”ということだけは分かり、その安心感からなのか、急に強烈な眠気に襲われ、半場気を失うような形で眠りにつきました
朝、目が覚めるとすぐ姉に「もう、嫌だ!」と抱きつきながら大声で泣きつきました
姉がどうしたのか?と聞いてくれて、昨日あった出来事を話すと「捨てよう」と言ってくれました
私「でも捨てるなって」
姉「私が捨てれば問題ないはず、言われたのは〇〇だから」
と言ってくれ、いつも喧嘩ばかりしていた姉がヒーローに見えました笑
姉は人形を鷲掴みにして(話を聞いた後によく鷲掴みにできるなと関心しましたが)ゴミ捨て場へ
人形は私達の家からいなくなりました
姉に何度も「姉ちゃんありがとう!」とお礼を言って、朝食を食べ、私は小学校へ
学校内では
”これでもうあんな怖い思いしなくて済むんだ!”
という安心感からいつもよりニコニコとしていましたが、友達からは
「目の下のクマどうしたの?」
と心配されました
「ちょっとね」
と、はぐらかし、どうでもいい話をしたり、給食の早食いを友達と競ったり、居眠りしながら授業を受け、友達とふざけあったりしながらその日を終えました
学校から帰宅し、鼻歌を歌いながら自分の部屋へ向かい
”まずは漫画でも読もうかな〜”とドアを開け、タンスの棚の上に置いてある漫画を取ろうとした時
捨てたはずのフランス人形が棚の上から私の顔をじっと見ていました。
後日談:
- 実体験です。
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