
これは、私がリアルタイムで見ていた配信の話です。
配信者の名前は、カトクカ。
女性のオカルト系配信者でした。
今でも、ときどき深夜配信のコメント欄でその名前を見たという人がいます。
けれど、たぶんそれは、もう本人ではありません。
少なくとも、私が見ていた頃の彼女ではないと思います。
私はカトクカの古参リスナーでした。
最初に見たのは、心霊トンネルの配信だったと思います。
怖がりなのに、怖がっているところを隠そうとして、わざと明るく喋る人でした。
「いや、怖くないから。怖くないけど、今の音は普通に嫌」
そういう言い方がうまかった。
心霊スポットへ行っても、変に霊感があるふりはしない。
映ったものをすぐに「本物」とも言わない。
けれど、怖い空気を作るのはうまい。
コメント欄との距離も近かったです。
リスナーが騒げば拾う。
煽られれば笑って返す。
変なコメントも、だいたいネタにする。
だから、あの廃村キャンプ配信も、最初はいつもの企画の延長だと思っていました。
タイトルは、確かこうでした。
【一泊検証】地図から消えた廃村でソロキャンプする【白い女の噂】
その廃村については、事前の配信でも少し話していました。
山の中に、もう誰も住んでいない集落がある。
昔は十数軒の家があったが、今は地図にもほとんど出てこない。
村の奥に祠があり、夜になると白い女が歩く。
よくある話です。
ただ、その配信で一つだけ気になる資料が出ました。
古い郷土資料の写真です。
そこには、村で行われていたらしい儀式の名前が載っていました。
過渡供花。
読みは不明、と資料にはありました。
でもカトクカは、それを見て笑っていました。
「これ、カトクカって読めなくない? 私の名前じゃん。怖いんだけど」
コメント欄も盛り上がりました。
《名前回収きた》
《これは行くしかない》
《過渡供花=カトクカは草》
《いや普通に怖い》
その時の私は、ただ面白がっていました。
今思うと、あそこでやめておけばよかったんです。
配信当日。
カトクカは夕方から車載配信を始めました。
山道へ入る前からカメラを回していて、助手席側に積んだテントやライトが時々画面に映っていました。
スマホの電波は弱く、映像は何度か荒れました。
それでもコメント欄はいつもより速かった。
《いよいよ》
《雰囲気ある》
《電波大丈夫?》
《今日ガチ回っぽい》
私も見ていました。
当時の私は、こういう配信を作業用に流すことが多くて、その日も部屋の明かりを落として、パソコンの画面で見ていました。
後日談:
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