
長編
あんたがたどこさ
匿名 23分前
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速度で地面にぶつかり、僕の頭より高く上がったはずだ。
そして僕は、目を瞑ったまま、その場で足を軸に一回転した。意味は無い、自分でハードルを上げただけ。両腕を前に出す。この中に、ボールが落ちて来るのか。
時間にすれば、二秒は無かったと思う。でも、長かった。
腕の中に、ボールが落ちる感触はない。
しかし、いつまで経っても、ボールが床に落ちる音も、ない。
しばらく、そのまま目をつぶっていた。開けるのが怖かった。でも、足の震えはいつの間にか止まっている。深呼吸、一回、二回。
僕は目を開けた。
バスケットボールが、消えていた。
「……うわー」
……うわー……うわー、うわー……
僕の声が、こだまする。
でもそれは、体育館だったから当たり前だったのだ。そのことに僕が気がつくまでに相当の時間を要したけれど。
耳を澄ませば、外で鳴く虫の声がかすかに聞こえた。
僕は携帯を取り出す。アンテナが一本立っていた。信じられないだろうが、携帯のアンテナが一本立っていたことに、僕は本当に飛び上がって喜んだのだ。
その瞬間、僕の手の中の携帯が鳴った。
Sからだった。急いででた。
『……よお。ところでお前さ。いま、小学校にいるのか?』
Sの声。不覚にも泣きそうになりながらも、僕は「うん、うん。そうだよお!」と大声で返事し、若干ひかれた。
がんっ。
体育館に、すさまじい音が響く。
何事かと思って音の方を見ると、丁度体育館の裏口が蹴破られて、息を切らしたKが中に入ってきた。そうして、Kは懐中電灯をこちらに向けた。
「お。……おおう。こんなとこに居やがった。……マジでありえねーし。目え開けたらいきなり居ねえんだもん……マージーありえねえよまったくよお……」
そう言って、Kは「あーうー、だあーもう疲れた……」と体育館の床に、だらんと寝そべった。
電話の向こうでSが何か言っている。
僕は黙っていた。
戻ったら絶対一発ぶん殴ってやろうと思っていたのだけれど。体育館の床の上で「うーんうーん疲れたよーい」と唸りながら転がるKを見ていると、何だかその気も失せた。
僕は受話器を耳にあて直し、Sに向かって言う。
「とりあえず、帰るよ」
『ん? ……おう、そうか』
それから、帰りにSの家に寄る約束をして、電話を切った。そうして、まだ床でごろごろしているKを軽く一発蹴ると、実はぼろぼろ泣いていた奴を引っ張り起こして、
この怖い話はどうでしたか?
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- めっちゃ怖かったです、けど、戻れてよかったですね結
- 私も、危険というレッテルをどこかに貼ってみたいですね ところでレッテルってどこかに売ってるのでしょうか ホームセンターや文具・雑貨店などでは見たことがありません Amazonでもレッテルという商品はありませんでしたあ
- これ、なつのさんの奴だよね?肉団子
- 創ったにしても好きだわ、この手の話。でもよく手毬唄で戻れるって気付いたなぁ。自分だったら試しもしないかも。kayaro
- 何で友人と電話してるのに目の前で話してるんだ?名無し
- 本当にあった訳ないじゃない 文章が上手いですね
- 素晴らしい。だっち
- 本当に有ったんですか? 電波関係なく写真や動画撮って欲しかったですね!!