
短編
消える家
あるんだわ 2日前
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これは私が中学生の頃に経験した少し怖い不思議な体験です。
当時、私は塾に通っていました。家から歩いて15分程の距離でしたが、行く道は塾以外ではほとんど通らない道でした。私はいつも19時頃に塾に行っていましたが行く途中に古い木造の家が一軒あり、たまにその家の住人らしき人が歌いながら出て来ることがあります。30歳くらいの男性で、歌う曲は当時の流行りの曲が多かったです。その後、塾に通い出してから半年ぐらい経ったころです。昼間に用事でその木造の家の前を通ったのですが、その家は無くなっており、街でよく見る有料の駐車場になっていました。 最初は急いでいた事もあり、気のせいだと思いましたが、夜に通るとまたその家はありました。
その後、少し気になったのでまた昼に通ると家の場所は駐車場になっていました。その時はまだ恐怖はなく、たまに消える不思議な家だとしか思っていませんでした。ただよく見かける歌いながら出て来るあの住人は一体何なのか、そもそも人なのか気になりました。その後、昼は駐車場、夜は木造の家、なら夜中は何になるのか思春期特有の謎の好奇心から12時頃に家を抜け出し、その家を見に行きました。するとそこは家ではなく神社になっていました。私は少し驚きましたが、ある程度は予想していました。
その神社はそこそこ奥行きがあり、赤い鳥居の奥に本殿があるよく見る普通の神社でした。しばらく見ていると塾の方向から歌声が聞こえ、見るといつも家から出て来るあの住人でした。その住人はスタスタと神社に入って行きましたが、入り口で止まり、こちらを振り返り、笑顔で「さよなら」と一言挨拶をして神社の中に消えて行きました。私はその時、初めて声を聞きましたが、さよならという言葉に多分もう会うことは無いだろうと感じました。
その後、塾の途中であの家を見る事はなくなり、駐車場のままでした。半年以上あの住人を見かけていたので今では少し寂しいと感じています。今ではあの家や神社は昔の土地の記憶なのでは無いかと思っています。そしてあの住人は神社の神様だったかもしれません。
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- 素敵なお話。ささ
- すごく不思議で、素敵な話ですね。 木造の住人と仲良くなったらどうなっていたんでしょう‥ すごく好きな雰囲気の話です。ここ