
長編
妙な穴
匿名 2024年8月24日
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愛知県名古屋市内でのこと。
これは今から10年前の話しです。
私は当時チェーン展開してる美容室勤め2年目でした。
住まいも会社が寮としてマンションの3LDKを家賃補助で借りてくれてそこでスタッフ3名で暮らす形でした。しかしある時会社の経営が苦しくなり一部の店舗を畳む必要が出てしまい私が勤めている店が畳まれることになりました。それと同時に在籍してるスタッフも解雇通達されてしまい私は住まいも追い出される形になってしまったので新しい美容室の再就職先を探すよりも住まい探しを急いでする必要がありました。
美容師なりたてで貯金もろくに出来てなかったからとにかく物件探しの条件は二つ「新しい勤務先が多少離れてても大丈夫なように駅近」「とにかく安い」で探してました。が当然そんないい物件にはなかなか巡り会わなくて色々な不動産会社を回って途方にくれてました。
そんな時に一つの物件紹介がありました。
地下鉄の駅から徒歩3分で築年数15年の1階と2階合わせて8世帯が住めるアパートでした。
家賃は5万7千円なのですが1部屋だけ空室で空いておりその部屋の家賃は3万2千円でした。
すぐに部屋を見学しに行きました。間取りは1Kで部屋の広さが7.5畳フローリングでバスルーム、トイレ別でした。ただ見学中気になることがありました。
バスルームの浴室の横に何かめり込んだような妙な穴が空いてました。穴の大きさは大体50〜60cmだったと思います。私は気になり不動産の人に聞くと「あーすいません!前の住人が壊してしまって!ただ住まわれる場合は入居日までに直しますよ!」と言われました!私は「ここって安い理由はもしかして訳アリ物件ですか?」と聞くと「いえいえ違いますよ!安い理由も空室が少し長く続いていて大家さんも満室にしたいから徐々に家賃を下げていって今に至ります!」とおっしゃられました。
今の私ならその様な説明を受けて入居の決断に至ることはありませんが、当時の私は急いで住まいを探す必要があり焦っていましたので「まぁ訳アリじゃなきゃ大丈夫か!」と入居を決めてしまいました!
入居が決まってから2週間ほどで新しい勤め先の美容室も決まり新しい生活は順調にスタート出来ました。
入居してから1ヶ月ちょっと経ったある時友人が家に遊びに来ていて夜も遅くなったので泊まって行くことにしました。僕はロフトベッドで寝て友人は床に布団を敷いて寝ました。すると夜中に友人に起こされました。私は「なんだよ?」と聞くと「バスルームから風呂桶が落ちる音がした!」と言われました。一緒に見に行きましたが確かに桶は落ちてますが元々下に置いてあったかもしれない。何より私は音に気付かなかったし今までも聞いたことはありません。「悪い冗談よせよ!笑」でその日は終わりました。それから違う友人にカット練習したいから私の家で髪を切らせてもらう約束をしていました。カットが終わり頭に付いた髪を流したいからバスルームを使用してもらってますとバスルームから「うぉ!!」と驚く声がしたので私は「どうした?」と聞くと友人は「シャンプーしてる時に女の人のかすれたような声で 苦しい 、と聞こえた」っとおっしゃりました。
私は「冗談よせよ!笑」「俺住み始めてから聞いたことないぞ」と言ったら友人も「気のせいだったかな?」で話しが終わりました。そのまま友人と家で宅飲みをして泊まっていきました。
夜中に友人が起きて「酔い覚めたから帰るわ」と帰宅準備をはじめました。私は「夜中の3時だし朝まで寝たら?」と言うと友人は「それは無理!」と強い口調で言ってきて結局急いで帰ってしまいました。
「なんだ?」と思いながらその日は終わり数日して実家にいる母から電話が来ました。「アンタ最近大丈夫か?」電話の一言目がそれでした。
私は「何が?別に普通に暮らしているけど?」
と答えると母は「何か妙なこと周りでないか?」
と聞いてきました。母が何故このようなことを聞いてくるか訳を聞くと母は昔から霊感があり幽霊など見ることもあり、とくに予知夢的なものを見てはその内容がざっくりと当たってることもありました。今回母は夢を見たようでその内容はベッド寝ている僕の真横で見知らぬ女がずっと睨みつけてブツブツと何か呟いているそうです。
その話しを聞かされて私は「僕は全然心当たりないなぁ〜………まぁ強いて言えば……」
私は友人2人が泊まりに来た時の事を母に電話で伝えました。母は「そこ本当に大丈夫な物件だったのか?話しを聞いてからすごく気持ち悪くなってきた!」と言われ話をしていたらバスルームから風呂桶が落ちる音が聞こえました。
「え!」と私はなり今まで友人が言っていたことはこれかと思い恐る恐る確認しに行きました。
桶は落ちてました。私はまぁたまたまだろうと気を紛らわせる為に酒を飲み母との電話を切り眠りにつきました。その晩ロフトベッドで寝ていると金縛にあいました。そのあとものすごい耳鳴りがしてきて頭にガンガン響く感じがしました。金縛は全然解けませんが耳鳴りは徐々に解けてきて目もうっすらと開けられるようになった時に「………あ……あ…く…苦し…い」と小さくですが聞こえました!するとバスルームのドアが開く音が聞こえそのあとに私の寝ている部屋のドアが開きました!私は怖かったですが正体を知りたくて目だけ必死に動かしましたが何も見えません!するとロフトベッドのハシゴを誰かが上がってくる気配を感じました。上がりきった何かはそのあと布団の中に潜り込んで来て徐々に私に近づいてきました。何かの両手が私の胸あたりに近づいて来たあたりでピタっと止まりました。何かの重みを数分感じたまま私は泣きそうなのを必死に堪えていると布団が捲り上がり中から悲しげない顔をした黒髪のショートボブの女性が出てきてブツブツの何か呟きながら私に抱きついてきました!どのくらい時間が経過したか私は知らぬ間に意識を失い気がつくと朝を迎えてました。夢だったのか?っと思いましたが布団は捲れたままで昨晩バスルームに落ちてた桶を元の位置に戻したはずなのにまた落ちてましたので現実だったのでしょう!
私は1ヶ月後に引越しを決めて引っ越すまではちょくちょく友人に泊まりに来てもらったり私が泊まりに行ったりで過ごしました。
以前急に帰ってしまった友人に何故あの時帰ったか聞くと「寝てる時にバスルームから桶が落ちる音がした……確認しにバスルームのドアを開けたら壁から黒髪のショートボブの女が頭だけ出して俺と目が合ったんだ!」と教えくれました。
私は退去する前に不動産にこれまでの事を言いました。不動産は「本当にすいません!ですがあの部屋は本当に訳アリ物件とかではないのです!バスルームの穴も以前の住人が酔って転げて出来た物だと報告を受けてまして……家賃が安い理由も当初に説明させていただいた通りです!もし信じられなければ事故記録がないか資料なり弁護士を立てていただいてもかまいません!」ここまで言われると私も追求しにくくなり話しはそこで終わりました。
あの女性はどのような後悔を残してあの部屋にいるのか、そして何故風呂の桶を落とすのか今だにわかりません。
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