
大学4回生、当時の俺は就活を終えて、最後の人生の夏休みを謳歌しようと、鈍行を乗り継いで北海道の知床に行き着いた。
就活で東京中を駆け回った反動か、自然を求めて…しがらみから解放されたかった。
泊まる宿は決めていた。正確には住み込み宿で、簡単なベッドメイキング、料理、掃除当のバイトをしながら、帰る日を決めずに知床を満喫する。
ようやくたどり着いた頃にはすっかり真夜中で辺りは真っ暗、夏でも一際涼しかった。
駅のロータリーで、宿の主人の送迎を待つ。
到着の連絡をしてから5分ほどしても迎えの車が来る様子がないので、駅の周りを散歩した。暗闇に目が慣れてくると、小高い丘にピラミッド風の人工物を見つけた。
そろそろ迎えの車が来るはずだが、高台からなら車も見つけやすいと考えた俺は、ピラミッドへの道を探そうとした。
しかし、草が茂っている上に光源も少ないためか見つからなかった。
足元を見て歩いてると、後ろからクラクションが鳴った。
迎えの車が来たのだ。
その宿には、俺以外にも女子高生が住み込みバイトに来ていた。名前はエリ。俺よりも1週間早くここにお世話になっているらしい。
到着した翌日、庭の掃除をしている時に、エリから話しかけて来てくれた。
エリは今日は非番で、既にここら辺一帯の観光はし尽くしたらしい。そこで、昨日のピラミッドについて聞いてみた。
エリによると、ピラミッドは無人の展望台で、オホーツク海を一望できるとのことだった。
ただ、エリはここに来てからまだピラミッドには行っていないと言う。
そこで午前の仕事を終えた俺は、早速エリを誘って徒歩でピラミッド展望台を目指した。
ピラミッド展望台は駅から近いが、人気がなかった。前回、真夜中にピラミッドまでの道が見つからないのは暗闇のせいだと思っていた。
しかし、昼過ぎにも関わらず見つからない。草むらが生い茂り人が登った形跡が一切見つからないのだ。観光案内図に乗らない程度の展望台だと、人の管理が行き届かない為どうしても荒れてしまうのだろう。
「ここから、登れそう!」
エリの声が聞こえて、近寄るとかろうじて岩に手をつきながらピラミッドのある小高い丘へ登れそうだ。
ピラミッド展望台は外側は四角錐型だが、その錐の中に収まる形で箱型建屋があり、その2階部分から海を眺望できる施設だった。
小さな施設で、素敵な眺めだがタイミングが悪いせいか誰一人いない。
箱型建屋は展示室のようだ。
「わっ」
展示室の重い戸を押したエリが小さな声をあげる。
後日談:
- エリとは連絡がつかなかった。 LINEの友達リストにもいないし、主人曰くそもそも住み込みバイトに来ていたのは俺一人だった。
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