
長編
海浜公園の出来事
か 4日前
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ら、あの、異様に静かな瞳と目があってしまったら。
人によっては夢のような出来事かも知れませんが、私には耐え難い恐怖でしかありません。
足首を固定したライダースブーツが、砂浜にとられてうまく走れませんでした。これは、夢の中で体がうまく動かない現象によく似ていました。
私は泣きそうになりながら、バイクにたどり着き、あわてて飛び乗りました。
ミラーにかけてあったヘルメットをかぶり、震える指先でキーを差し込みました。
そして顔を上げ、しまったと動きをとめました。
バイクは海の方を向いて止めてありましたので、バイクにのれば、必然的に海を見てしまいます。
もし、目の前の空間いっぱいにあの鯨がいたら。耐えられない。
恐怖で目を閉じることもできませんでした。
呆然とする私の眼前に広がっていたのは、やはり穏やかな海でした。
私は安堵と同時に、あの妙な寂しさを感じました。
まるで、驚かしてごめんね。と言われたような気持ちになりました。
ヘルメットの顎紐をとめ、狭い道で苦労してバイクを反転させ、元来た道を戻りました。
念のためスマートフォンのナビで自宅の住所を設定してみると、やはり30分ほどで帰れると表示されました。
帰り道は、どこかぼうっとしてしまい、何度か青信号に気づかずクラクションを鳴らされてしまいました。
帰ってからホームページを見ると、私は、海浜公園私のずいぶん端の方に行ってしまっていたようで、Googleマップでもあの砂浜の位置は確認できました。
しかし、そこには鉄格子が設置され、こ洒落たベンチなどが置かれており、私の見た砂浜と状況が異なっていました。
あの海浜公園は、埋め立て地を利用したものですが、それと何か関係があるのかもしれません。
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- そのような夢を見たのでしょう匿名
- ただ単に怖いだけでなく、もの哀しく美しい話でした。 こういう余韻を感じさせる話は好きです。もぐこわ