
中編
第三診察室
匿名 2025年7月19日
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郊外に元病院だった建物がある
もう、十年以上も前のこと・・・・
当時高校生のMさんは、ここに友だち数人と
探検のつもりで入り込んだことがある
・・・・そのときの話しだ
入ったのは夕方だった
廃院になってからまだ間がなかったせいか
思ったより中は荒れていなかった
長い廊下や階段を歩いて
各部屋の戸棚を開けたりしているうちに暗くなってきた
明かりを持ってきていないので
自然と帰ろうという気になって
玄関に向かって歩いていると・・・
「あっ、ひとりいない、あれ?Kは?」
「Kどこ行った?」っと誰かが声を上げた
そういえばKの姿がない・・・・・
「おーい!どこ行ったぁ!」
反響する院内
「どこにいるんだぁ?」
「おーい」
「おーいどこだぁ?」
「どこにいるんだぁ?」
「おーい」・・・・・
いくら呼んでも返事はない・・・・
っとボソボソと話し声のような
うなずくような声が聞こえる
「Kかな?」
「そらそうだろう、でもKだとして・・・・」
「俺ら以外の誰と話してるんだ?」
誰、と聞いて鳥肌が立った・・・・・
「とにかく、声のする方に行ってみよう・・・・・」
おそるおそる、その声に近づいていく
話し声がはっきり聞こえる
第三診察室と書かれた部屋の中からだ・・・
恐る恐るドアを開ける
中にK君はいた・・・・
「そう言えば最近、食欲ありません」
「いえ、そんな事はないです」
などと誰もいないのにまるで診察のように答えている
「何してんだよ!」
Mさんが大声を上げてK君に近寄った
「何って、先生に診てもらってるんだよ」
っとK君は怒って答える
「お前、大丈夫か?」と、頬を二、三度ひっぱたくと
ふっとK君が気絶する・・・・・
「変だ!はやく連れて行こう」
あわててみんなでK君を抱きかかえて病院を出た
そしてK君を家まで送った
その翌日からK君は学校へ来なくなった
家に連絡してみると、熱を出して寝込んでいるらしい
それが五日も続いたので
心配になってMさんたちは見舞いに行った
するとお母さんが出てきて
「あぁ、ごめんね、Kは今、病院に行っているのよ」と言う
そういえばK君のバイクがない
「どこの病院ですか?」
「いつものS病院だと思うけど」・・・S病院なら近い
「ちょっと行ってみます」とみんなでS病院へ行った
ところが受付で聞いても、Kくんは来ていないという
K君の家に電話してみる
「おばさん、S病院には行ってないみたいですよ」
「あら、そう?おかしいわね・・・」
「あんたたち来てくれるほんの二、三十分ほど前に、病院行くって」
「保険証も持って行ったから、病院には違いないと思うけど」
「病院・・・・・・・? まさか」っとひとりが言う
みんなで例の廃院へと向かった
建物の前に一台のバイクが見えた
「やっぱりK、来てるよ」
中に入ると、やはり第三診察室の方から話し声が聞こえる
前に出た時に開け放したままだったはずのドアが閉まっている
少し開けて覗くと・・・・K君がいた
ボソボソと何か言っている
よく聞くと・・・・・・
「そうですか、じゃあ大事をとって入院ですか、はい」
「そうですか、じゃあ大事をとって入院ですか、はい」
「そうですか、じゃあ大事をとって入院ですか、はい」
っと何度もひとりごとを言っている
「おい!しっかりしろよ!」
再びKくんをみんなで抱えて外に出た
タクシーでK君を連れて帰った
ご両親は気味悪がったが、その一連の話しを納得してくれて
お父さんはKを当分部屋から出さないようにする、と約束してくれた
それから、K君は二度と学校へ来ることはなかった
一体、K君に何があったのか
家に連絡してみても、お母さんは
「Kは療養中です」と繰り返すばかりだ
そしてそのままMさん達は卒業し
そのこともいつしか忘れてしまったという
数年前、街中でMさんはK君と偶然会った
痩せてはいたが、紛れもないK君だった
「あれからどうしてるんだ?」と聞くと
「今も、病院に通ってるよ」
そう言うとK君は去って行ったという・・・・
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