
長編
ダサ子さん
きき 2日前
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もう10年以上前になるけど、俺が某アパレル会社で働いてたときの話。
その会社はいわゆる「出る」とこだった。
ちなみに出るのは二人で、嘘みたいな話だが一人はおそらくは日本で一番有名なあの方に容貌が酷似していたので敬意を持って「ダサ子さん」と、もう一人は男の子で顔色が悪いことから愛着を込めて「オンジュくん」と呼ばれていた。
さらにダサ子さんを見るのは決まって男性社員で、オンジュくんを見かけるのは女性社員ばかりなのでしばしば論争の火種になったりもした。
まあ出るっていっても特に害があるわけでもなく、「残業で終電がなくなったから仮眠とってたら横にダサ子さんが立ってた」とか「給湯室にオンジュくんが入って行った」みたいな他愛もない現象ばかりだったのでしまいには皆慣れっこになってて「ああ、またか」みたいな空気でそれなりに楽しんでもいた。
年一でお祓いもしてたんだけどお祓いの当日から見掛けたりしたもんで、御祈祷の御札は「祓えない」から「払えない」となり、飲み会で奢って貰ってばかりいる社員の席に集められたりもした。
そんなわけで俺もちょいちょいダサ子さんを目撃はしてたんだけど、一回だけガチで怖い思いをしたんでその時の話。
その日も俺は残業で気付けば0時回ってた。そろそろ帰ろうかとフロア内に残ってる人に声を掛けにいった。いつもならこんな時間でも結構残ってるんだけど珍しく誰も居なくて、俺の他は企画部の女の子(以下、A ちゃんとする)が一人居るだけだった。
「残ってるのAちゃんだけ?俺先に帰るけど警備ロックのやり方わかる?」
「ああ、俺さん。いや私わかんないです。私ももう帰るから一緒に出ましょう。」
ちなみに会社を最後に出るときに警備ロックをかけるんだがカードキーは管理職しか持っておらず、俺のような平社員が最後に退勤する場合は全フロアに誰も居ないのを確認してから警備会社に電話して外部ロックしてもらうという非常に面倒臭いシステムだった。そんなわけでAちゃんが帰り支度をするのを待っていると企画部の電話が鳴った。受話器を取るAちゃん。
「はい〇〇(会社名ね)です。…もしもし?〇〇です。…もしもし?」
怪訝な顔をしながら受話器を置く。
「どっからだった?こんな時間に。」
「なんか電波が悪かったのかな?よく聞こえなかったんですよ。こう周りがザワザワしてて、居酒屋とか駅とか人が大勢いる感じで。で、切れちゃいました。」
多分
後日談:
- 大したことじゃないけど一応追記。 男にはダサ子、女にはオンジュ、ならあいつは? ということでプレスにいるオカマに聞きにいったところ「両方見たことない。そもそも幽霊を信じてない」と吐かしたので、よってたかって「なんのためのオカマだ」「もうオカマ辞めろ」「親孝行しろ」などと罵詈雑言を浴びせていたらしまいには泣かしてしまった。 本人曰く「オカマは繊細なのよっ!」だそうです。 後日人事部長からこっぴどくお叱りをうけました(こいつはゲイ)。 ちなみに人事部長はダサ子さんを見たことがあるそうです。
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