
長編
スーパー銭湯
(;¬_¬) 2016年6月19日
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今日、スーパー銭湯に行ってきた。
脱衣所に行くと、色黒の男とおっさんが大声で怒鳴り合う声が聞こえてきた。
おっさん「お前順番守れよ。うちの子供だってそのぐらいのこと分かるぞ!」
色黒の男「何言ってんだよ!お前が守れよ!」
色黒の男はニューヨークにいたら黒人から「ブラザー」と呼ばれそうな感じの男で、清原和博のように黒く、とても威圧感のある男だった。
おっさんの方も体格がよく、一度言いだしたら引かない感じの男だった。
途中から聞き出したので正確にはわからないが、どうやら二人はスーパー銭湯に設置されている「日焼けマシーン」の順番をめぐって言い争っているようである。
「人は見た目が9割」とかいう本があったが、私にはブラザーが割り込んだように見えた。
私は、気にせず着替えを済ませ風呂に入ることにした。
私が風呂に入ろうとした時、おっさんが
「このチキンが!」
と怒鳴った。
すると、ブラザーが風呂場まで響くほどの大声で、
「誰がチキンだ!コラァ!!」
と言い返した。
私は、
「チキンじゃねえよ。黒豚だ。鹿児島産だ。なあ、ブラザー」
と思ったが、ニューヨークのギャングを敵に回す勇気もないので何も言わず風呂に入った。
30分ぐらいして脱衣所に戻ってきた。
おっさん「従業員呼べよ!」
ブラザー「呼んでみろよ!」
二人はまだやっていた。
数分後、従業員がきて、二人の事情を聴き始めた。
この時、責任者と思われる従業員は女性だったのだが、ブラザーは前を隠さず全裸で女性の前に立ちおっさんを批判し始めた。
私は、全裸で女性従業員に主張するブラザーをみて、
「なぜ、隠さないんだ。これがニューヨーク・スタイルか?」
と思ったが、日米の文化の違いに戸惑い、何も言えなかった。
一方、おっさんは腰にタオルを巻いていた。
「人は見た目が9割」とかいう本があったが、
ブラザーよ、
1割くらいは
隠そうぜ
私は心の声を詠んだ。
私は、岩盤浴に入ることとした。
30分ぐらいして脱衣所に戻ってきた。
おっさん「警察呼べよ!」
ブラザー「呼んでもいいですけど、警視以上の人を呼んでくださいね。じゃないと話が通じないんで。」
ブラザーは「警察」という単語に明らかに焦りを見せていた。
近くの人に聞いてみると、私が岩盤浴に行っている間に一旦喧嘩は終了したが、おっさんと喧嘩している間に日焼けマシーンの順番を抜かされたと主張するブラザーが「俺はならんでいたんだから次、俺な」という感じで再度割り込みをし、これに再びおっさんが激怒したそうだ。
ブラザーは女性従業員に対して、
「僕は、ちゃんと並んでいました。でも、この人と言い争っていたので順番を抜かされたんです。」
と言っていた。
私は、
「いい加減にパンツはけよ、ブラザー。ここはニューヨークじゃないって!」
と思いながら、「警察」という言葉に弱気になったチキンのブラザーを見ていた。
その時、私はふと思った。
①脱衣所で人を待っているふりをしておっさんとブラザーの喧嘩を見ているギャラリー達
②男湯の脱衣所にいる女性従業員
③説教するおっさん
④そして、ニューヨーク・スタイル(全裸)のブラザー
これは、
「女性が全裸の変態に会い、その変態をおっさんが捕まえ、それを野次馬がみている」
という光景ではないかと。
そう思うと、ブラザーの言うことがすべて上記の設定で聞こえてきた。
ニューブラ「警察呼んでもいいですけど、一課の人を呼んでくださいね。」
私の心の声「ブラザー、迷惑防止条例は生活安全課とかじゃないか?」
おっさん「お前、もう無理だよ。諦めろよ。」
ニューブラ「分かりました。警察呼びましょう。でも、僕はそういうシステムとは知らなかったんです。」
私の心の声「全裸にシステム? いや、違う違う! これは日焼けマシーンの順番で喧嘩してるんだった。喧嘩していたら並んでいないことになるというシステムのことか?ブラザー」
もうブラザーの言うことが、
「私は故意で脱いだんじゃない。事故だ。事故なんだ。だから警察だけはやめてくれ。謝るから。パンツはくから。」という変態露出狂の言い訳にしか聞こえなくなってきた。
その後、ブラザーがどうなったのか、私は知らない。
しかし、「日焼けマシーン」を使うときは順番を守らないと大変なことになることだけは分かった。 完
*ニューブラ:「ニューヨーク・スタイル(全裸)のブラザー」の略
*「私」が実際に体験した「本当にあった怖い話」シリーズ
① スーパー銭湯
② 扇風機おじさん
③ 喪黒兄
④ 「死」の概念
⑤ 自転車チャンピオン
⑥ スネオ系男子
⑦ ケンシロウ
⑧ 綱吉公の理想郷
⑨ 禁忌と懺悔
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