
中編
ピーポー
らむね 3日前
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でした。
「そうかあ。教育テレビとかでやってたのかな。乾燥して火事の多い冬は、消防署の特集をやっててもおかしくない。」
そのくらいにしか考えていませんでした。
それからしばらくたった夜のことです。
トイレに起きた僕は、厳しく冷え込んだ廊下をつま先立ちになって歩いていました。
早くあったかい布団に戻らなきゃ。用を済ませ、寝室に急いでいると
「ピーポー…、ピーポー…」
娘が洗面台で鏡の方に向かって左手をひらひら振っているのがチラッとみえました。
「こんなところまでハイハイしてきちゃったの?風邪ひいちゃうよ。パパと一緒にママのところに戻ろうねー」
抱きかかえようとすると、娘はいつにも増してぐずりました。
「いや!!ピーポーのところ!ピーポーのところ!!」
あやしても全くいうことを聞きません。
「ピーポー!パパ!!ピーポーだもん!!」
「どうしたんだよ全く…。…じゃあ、カレンダーも一緒に持ってねんねしようか?」
壁にかかったカレンダーを外そうと、
手を伸ばしかけたその時、
「ピーポー、早く、よんで?」
鏡の中に見えたのは
血に染まったワンピースを着た、長髪の女。
「あ…あ…う、うわあああああああ!!!」
僕はパニックになり、泣き叫ぶ娘を抱えて寝室に駆け込みました。
あの後すぐ、騒ぎで起きた妻も加えて三人でもう一度洗面台に行きましたが、あの女は二度と鏡に映ることはありませんでした。
次の日、消防団にいる知人に神社の方を紹介してもらい、マイホームと家族三人ともどもお祓いをしてもらいました。
娘はその後何ともありませんでしたが、その後あのカレンダーを見せても「ピーポー」ということはありませんでした。
むしろ、「ママー、これなにー?」と妻に尋ねる始末でした。あれ以来完全に覚えていないようです。
もしかしてあの女の霊が娘を介して救急車を呼ぶように訴えていたのかもしれません…。
小さい子は霊が見えるって言いますから。
三年後、第二子が生まれました。男の子です。
すくすくと育ち、「パパ」「ママ」も話し始めるように。
娘もお姉ちゃんらしく、よく弟の面倒をみてくれています。
そして、ある晴れた日。
「きゃきゃきゃっ!」
洗面所の鏡の前で息子がうれしそうに笑っています。
「どうしたー?なにか面白いものでもあったかなー?」と僕。
鏡の方を指さしながら息子は…
「ねえねえ、聞いてパパ!ピーポー!ピーポーいるよ!」
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- あんまりまりこわくなかったのでもっとこわいのがみたいですカイトウx