
短編
地下の教室
匿名 2日前
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非常勤講師として都会の小学校で勤務したときの体験。
都心にあるその小学校はオフィス街の人口の少ないところにあり各学年1クラスずつしかなかった。
30年くらい前でも多くて1学年2クラスあるかないかという感じだったらしい。
校舎は古く、戦前に今の鉄筋コンクリートの校舎が完成した。
この学校には地下室があり、地下にも教室があった。
勿論、地下の暗いところで一日中授業をするクラスなど考えられないが、戦前は戦災で校舎が使えなくなったときに地下の教室を臨時に使うことも想定していたらしい。
戦後は木造の別校舎もあって、子供が多いときでも地下の教室を使うことはなかったそうだ。
地下に続く階段は子供が勝手に入れないように封鎖されていた。
今でも地下の教室は残っていて、倉庫として使われていた時期もあるらしいが、今では点検以外で出入りをする人はいない。
そんなある日、俺は地下の点検の当番になり他の先生とともに地下室に降りていった。
電気は通っていてスイッチで階段や廊下、地下の教室の電気がつくようになっていた。
地下の教室は、黒板やランドセル棚、少し古い机などがあり普通の教室と造りはそれほど変わらなかった。
ただ窓もなく暗い雰囲気で、こんなところで毎日、一日過ごせと言われたら先生も子供もきついだろうなぁと思った。
倉庫として使われていた名残なのか、何が入っているか分からないダンボールや箱などが積まれているところもあった。
階段を下りて地下三階に来たときのこと。
教室の「○年○組」のような表札は当然地下の教室では見かけなかったが、地下三階の一つの教室だけ
「◻︎◻︎学級○組」
と書かれた表札があった。
まさか、ここの教室が使われていたのか?
その教室の中は、机と椅子が1セットだけあり、あとは教卓や先生用の机、それ以外ほとんど何もない部屋だった。
◻︎◻︎学級とは、その学校での特別支援学級の名称で、知的、情緒、病弱、肢体不自由など障害種別毎にクラスを分けるとき「◻︎◻︎1組」「◻︎◻︎2組」・・のように分けていた。
地下の奥深くの教室を使わないといけないようなクラスが過去に存在したのか。
一体、何の障害の学級なのか?
どういう理由でここの教室を使う必要があったのか。
もう一人の点検の先生も事情は分からず、謎は深まるばかりだった。
教室に机と椅子が1セットだけ残っている様子が、過去に誰かが在籍していたような妙にリアリティのある状況だった。
この怖い話はどうでしたか?
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- ↑あるんですか、保存して公開したほうがよくないですか
- 地下3階まで